こころの未来選書<br> ユングとジェイムズ―個と普遍をめぐる探求

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こころの未来選書
ユングとジェイムズ―個と普遍をめぐる探求

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  • サイズ A5判/ページ数 186p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784422112275
  • NDC分類 146.1
  • Cコード C3311

出版社内容情報

ユング心理学確立の過程で、ウィリアム・ジェイムズのプラグマティズムの哲学が、その「導き役」となったことを明らかにする。

C・G・ユングが『赤の書』に描かれた精神的危機を乗り越え、独自の心理学を確立する過程で、ウィリアム・ジェイムズのプラグマティズムの哲学がその「導き役」となった――。ユングとジェイムズ、この一見相容れない両者の間の知られざる思想的交流を丹念に追い、ユング心理学の新たな姿を提示する画期的論考。自らが体験したヴィジョンに向き合い、「個と普遍」の問題を探求し続けたユングの苦闘の軌跡を鮮やかに描き出す。

■目次

序文 河合俊雄
はじめに

序 章
 第1節 『赤の書』公刊以降のユング研究における本研究の位置づけ
  1-1 ユング『赤の書』
  1-2 『赤の書』の公刊
  1-3 ユング研究と『赤の書』
  1-4 本研究の目的
 第2節 検討の方法――ジェイムズの多元論哲学による照射


第I部 個別性の探求

第1章 ユング心理学成立前夜――フロイト中心的解釈からの脱却の可能性
 第1節 『赤の書』へ
  1-1 1913年のユング
  1-2 フロイトとの邂逅と訣別
 第2節 『ユング自伝』の失われた断片
  2-1 『自伝』成立の経緯
  2-2 『自伝』草稿におけるジェイムズへの言及
 第3節 ユングとジェイムズの接点
  3-1 ジェイムズとの出会い
  3-2 思想的接点

第2章 タイプ理論とプラグマティズム――「個人的方程式」としての諸類型
 第1節 『プラグマティズム』との接触
 第2節 『赤の書』前夜のタイプ理論
 第3節 ジェイムズのプラグマティズム哲学
  3-1 プラグマティズムの成立
  3-2 ジェイムズのプラグマティズム
 第4節 ユングにおける『プラグマティズム』の受容
 第5節 「個人的方程式」としての諸類型
  5-1 天文学における“personliche Gleichung”
  5-2 ユング心理学における“personliche Gleichung”
  5-3 心理的個人的方程式

第3章 『赤の書』と『タイプ論』――「私」の神話をめぐる探求
 第1節 タイプ理論の質的変容への注目
  1-1 外の体験と内の体験
  1-2 ジェイムズ理論に対する態度の変化
 第2節 『赤の書』の体験世界――イメージにおける対立物
  2-1 エリヤとサロメ
  2-2 二原理の同時性
 第3節 『タイプ論』における対立物の結合
  3-1 シュピッテラー『プロメテウスとエピメテウス』をめぐって
  3-2 類型をめぐる二元性と一元性
 第4節 「私」の神話をめぐる探求


第II部 個別性から普遍性へ

第4章 個性化と宗教的経験
 第1節 『赤の書』との離別――「個別性から普遍性へ」という課題
  1-1 ユングの転向
  1-2 普遍性への葛藤
 第2節 『宗教的経験の諸相』をめぐって
  2-1 ジェイムズ『宗教的経験の諸相』
  2-2 ユングによる『諸相』の評価
 第3節 「宗教的経験」と人格変容
  3-1 ユングの宗教論
  3-2 「二度生まれ」の人間観
 第4節 普遍化への方法論

第5章 個性化と多元的宇宙
 第1節 ユング「個性化」論における「個」の探求
  1-1 ユング「個性化」論の特質
  1-2 「個性化」論への批判
  1-3 「個別性」と「個人性」
 第2節 多元的宇宙
  2-1 ジェイムズの『多元的宇宙』
  2-2 多神論的心理学
 第3節 ユングの錬金術研究
  3-1 錬金術との出会い
  3-2 錬金術における「個別性」と「普遍性」
 第4節 「多元的宇宙」と「一なる宇宙」

終 章


引用文献
人名索引
事項索引

おわりに

【著者紹介】
小木曽由佳(おぎそ・ゆか)1983年生。日本学術振興会特別研究員PD(京都大学こころの未来研究センター)。東京大学文学部卒業後、東京大学大学院教育学研究科を経て、2013年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。臨床心理士。論文“The Red Book and Psychological Types: A Qualitative Change of Jung’s Typology,” Analytical Psychology in a Changing World: The Search for Self, Identity and Community, L. Huskinson & M. Stein (ed.), London & New York: Routledge, to be published 2014、訳書『ユング伝記のフィクションと真相』(共訳)シャムダサーニ著、創元社、2011年など。

内容説明

知られざる思想の交流。C・G・ユングが独自の心理学を確立する過程で、ウィリアム・ジェイムズのプラグマティズムの哲学がその「導き役」となったことを明らかにし、ユング心理学の新たな姿を提示する画期的論考。

目次

第1部 個別性の探求(ユング心理学成立前夜―フロイト中心的解釈からの脱却の可能性;タイプ理論とプラグマティズム―「個人的方程式」としての諸類型;『赤の書』と『タイプ論』―「私」の神話をめぐる探求)
第2部 個別性から普遍性へ(個性化と宗教的経験;個性化と多元的宇宙)

著者等紹介

小木曽由佳[オギソユカ]
1983年生。日本学術振興会特別研究員PD(京都大学こころの未来研究センター)。東京大学文学部卒業後、東京大学大学院教育学研究科を経て、2013年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。臨床心理士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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Gotoran

42
個別性視点からユングの個性化についてW.ジェイムズのプラグマティズムと照合させつつ論考させる。まずはユングとジェイムズが面識があり相互に高く評価し合っていたという事実が述べられる。次にユングの『赤の書』、ジェイムズの『宗教的経験の諸相』、『多元的宇宙』を引合いに出して個別と普遍の関係性の論考がなされる。最後にグリム童話『ガラスびんの中のばけもの』を参照して個別と普遍について考察される。著者の博士論文をもとに再編集されていることから専門性が高いものの、非常に興味深い内容だった。 2018/05/31

うえ

6
「テイラーは、1913年から17年の間に、ユングが多くの論文や講演でジェイムズを引用していることを指摘しており、ユングの所蔵していた『プラグマティズム』には、至るところに膨大な量のアンダーラインが引かれていたという」「ユングは『プラグマティズム』におけるジェイムズの二類型をほとんど直接に受け取り、それを自らの外向・内向というリビドーの構えとしての二類型に結びつけて論じる」「「心理的諸タイプ」の時点では、あくまでジェイムズ的な説明が依然前面に出ていた」しかし『赤の書』におけるヴィジョンは結合していくという。2022/01/23

mittsko

4
ジェイムズについて考え直したくて、積読だったこの本を再び手にとる。ただし、本書の主要な関心軸はユングである。「ジェイムズの多元論哲学という光源によって照らし出される、ユング心理学における」云々(19頁)。しかし、ジェイムズ論としてのこの屈折具合が、ボクのような者にはちょうどいい… のだが、やっぱりジェイムズについての学びにはならなかった(´・ω・`) ユング論として本書がどれだけ重要なのかは、ボクには判断しかねますので悪しからず2017/12/28

RS

0
"著者は最後にグリム童話の「ガラスびんの中のばけもの」を手がかりに、個別と普遍の問題を考察している。つまりガラスびんが一つの宇宙を形成していたように、面接室やそこに持ち込まれる語りやイメージが一つの宇宙であり、そこで徹底して深められる個別性は既に普遍性を含んでいる。"2021/10/12

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