出版社内容情報
およそ100~40年前に建てられた名建築家による「住宅建築」。時代を象徴し、今なお立ち続けている26軒の「名作住宅」を紹介。
内容説明
日本を代表する建築家による住宅は世界に誇るべき宝。幸いにも住み継がれた26軒の「住宅遺産」を撮りおろし、継承の物語をまとめた珠玉の一冊。
目次
写真(撮影:藤塚光政)
1 戦前の邸宅は、現代住宅になりうるか―1920~40年代
2 制限と清貧の協奏は、時を超えて響く―1950~60年代
3 気鋭の観念と理想を、引き受ける―1970~80年代
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばう
57
ここに登場する100〜40年前に建てられた住宅はどれも単なる名作住宅ではなく、「住み継がれている家」。つまり住人が変わりながらも現役の住宅としてある家という事だけれど、持ち主が変わらず住んでいたり住宅以外の用途になっていたりでそれを発見するのは中々大変だったようだ。実際、私もこういう古い家は昔から好きだけれど、住みづらい所もありそうだしメンテナンスも大変そうだし、実際に住むのはやはり躊躇してしまう。だからこそ本書に登場する住宅に住んでいる方々には心の底から敬服する。そしてこの家々はなんて幸せなんだろう。2020/11/22
ponnnakano
5
帯の「私たちの家」の写真で期待していた通り、写真がきれいでとても良かった。欲を言えばもっと写真を増やして欲しい。名作住宅を住み継いでいくためには、建築関係者以外の人たちに建築への興味をもっと広げて行くことが必要だと思う。例えばこの本をもっと読んでもらうとか、年末のNHK「岸辺露伴は動かない」で露伴邸として使われていたのが、本書にも掲載の「加地邸」なので、どういう家か詳しく紹介してもらうとか。「代田の町家」はこれまであまりじっくりみたことがなかったが、こじんまりした佇まいもシンプルなプランもとてもよかった。2021/01/02
あきこ
5
家は住んでいる人の鏡。私はそう思っている。本書は有名建築家の建てた家の紹介であるが、その家を選び住みこなしている、その人の作品であるようにも思う。古い家の良さは家好きにしかわからない。日本人はとかく新しいもの、その見栄えに惹かれがちだが、本当の美、とはこういうものではないかと思う。私も住んでみたい、と思いつつ巻頭の写真と巻末の平面図を何度も見ながら読み進んだのであった。2019/10/08
Koki Miyachi
5
大正から昭和にかけて建てられ、住み継がれている26軒の住宅を紹介。建築への筆者の温かいまなざしが印象的。住まい手への丁寧なインタビュー、住空間を美しく定着させたこだわりの写真、読みやすい紙面構成など見応えあり。古い名建築を住み継ぐという選択肢もありだともっと認知されるとよいのだが。ちなみに読後に自分で物件をいろいろ探してみたが、そう簡単には見つからず。怪しげな有名建築家設計という触れ込みの案件もかなりあって一般の方に見分けられるのか。いろいろ課題が多い分野でもある。2019/09/02
Kyo-to-read
2
建築の保存について考えると、建物自体もそうであるが、建築家自身の思想や想いを継いでいくことの難しさと、果たしてどこまでする必要があるのかという問いに突き当たると思う。建築に込められた哲学や思想を、住み手自身がどこまで汲み取るべきか、例えば住み心地を犠牲にしてまでそれを尊重すべきか、または、そもそもそこまでしないと、思想が継承できない建築は作品として完成しているかという疑問も感じる。一点気になったのは、何人かの住み手は行政に紹介を受けたと書いてあるけど、そんなラッキーは自分のような一般人にもあるんだろうか。2021/05/01