出版社内容情報
脳や神経をもたない単細胞生物でありながら、外的刺激に対して複雑な行動様式を示す粘菌(変形菌)。
その特異なふるまいは、コンピューターサイエンスや人工知能研究の黎明期から
科学者たちを悩ませてきた「単一始点最短経路問題」に最適な解を与えうる能力をもつことで注目を集めた。
この驚くべき生物が、どのようにして無数の色や形へと変身をとげるのか、
その体内でどのような化学反応がおき、多様な行動・判断を生み出しているのか、
その情報処理システムには、まだ多くの謎が残されている。
本書は、サイエンスドキュメンタリーフィルム『The Creeping Garden』の製作を通して、
2人の英国人がどのように研究を深めていったかを描き出す。
その過程で粘菌研究の歴史や、現在第一線で活躍する科学者たちの研究をふまえ、
粘菌を応用したコンピュータや人工知能、ウェアラブルデバイスなどの取り組みについても紹介する。
巻末には、粘菌を活用した研究で2度のイグ・ノーベル賞を受賞した中垣俊之博士と、
現在日本の変形菌研究をリードする川上新一博士による対談も収録。
目次
はじめに―ようこそ粘菌の世界へ
粘菌の真の正体を明らかにするために―映画『The Creeping Garden』の誕生
共同監督ティムとの出会い―映画の構想
粘菌との出会い―キノコから粘菌へ
宇宙人の侵攻―テキサスに現れた謎の物体
粘菌を探し求めて―見つけるのも同定するのも難しい
粘菌研究の歴史―粘菌の映画、論文、標本採集
粘菌のライフサイクル―姿形を変えながら成長する粘菌の一生
粘菌の生育―自宅での育て方
粘菌の撮影法を考える―表現手段と伝達方法、タイムラプス撮影〔ほか〕
著者等紹介
シャープ,ジャスパー[シャープ,ジャスパー] [Sharp,Jasper]
ロンドンに拠点を置く作家、映画評論家、映画史家。日本映画の専門家としても国際的に有名。日本映画ウェブサイト「MidnightEye」の設立者兼共同編集長。世界各地で数々の巡回回顧展や映画シーズンのキュレーションを担当。菌類の熱心なアマチュア研究家としての顔も持つ。制作および上映技術の歴史などを研究分野とし、同分野の研究によりイギリスのシェフィールド大学で博士号を取得
グラバム,ティム[グラバム,ティム] [Grabham,Tim]
イギリスに拠点を置く映画制作者、ビジュアルアーティスト、アニメーター。20年以上にわたり短編映画の監督を務める。2003年に独立系スタジオ「cinema iloobia」を設立。日本の音楽と哲学を感性豊かに描き出した自身初の長編映画「KanZeOn」(2011)は、著名な国際映画祭などで上映された
川上新一[カワカミシンイチ]
1966年大阪府生まれ。筑波大学大学院生命環境科学研究科博士課程修了。博士(生物科学)。専門は、粘菌類の分類・系統・進化学。和歌山県立自然博物館学芸員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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