感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かごむし
14
人生観を一変する偉大な一書であった。「新しい文明を求めて」との本題に入るが、絶対性を志向する宗教家と、現実の中から方途を模索する政治家の対談が、ぶつかり合いながらも、深い次元で合意に達する様は、あたかも現実社会でよりよい社会を築き、よりよい人生を生きるための縮図のようにも思えた。ある政治体制、思想、哲学、宗教が、それだけで移り行く社会に万能の答えを持つことなどありえない。どんな状況にあれ、人間は自らのその叡智で、困難を乗り越えていかなければいけない。その覚悟と責任を持て、とのメッセージのようにも聞こえた。2017/04/16
ロビン
12
下巻では「新しい文明を求めて」と題し、共産主義的全体主義の破綻から得ることができる教訓について、また「人間復興の世紀」を招来するために何が大切であるか等、熱い議論が交わされる。ゴルバチョフ氏が人間社会において共産主義が目指したような「完全かつ絶対的平等」「階級のない社会」は実現不可能だということを認める、健全な常識が大切であると話されていたのが印象的であった。各人には個性があり才能の違いもあり、時代との適性の問題もあり、それは「多様性」と紙一重である。社会が現実と格闘し調整しながらやっていくしかないのだ。2022/12/30
こうきち
0
この巻が一番緊張感もあり核心をつく感じであった。≪近代の拡張主義や進歩主義が破綻した原因を、歴史観の側面から論ずれば、時間を「過去」「現在」「未来」の三つに分割して、その直線的な進歩の延長上に、ユートピアの未来図を描き出してしまった点にあります。 そのため「過去」といい、「現在」といっても、もっぱら「未来」のために手段として奉仕する以外になく、そうした「未来」が、いかに生あるものを食いつぶし、歴史を蹂躙してきたかは、再言するまでもないことでしょう。やはり、「歴史観」の機軸となる「時間観」の転換が必要です≫2018/10/03