内容説明
日本のような国こそ国際政治構造を十分に理解し、様々な方向からの力によって移ろいやすい国際政治に対して研ぎ澄まされた認識と感覚を養っていかなければならないと思う。日本外交にとって、冷戦終結の意味とは先ずそうしたことである。それを検証することが、本書の第一の目的である。そしてそれは、多くの日本人の意識構造に潜在化しているものからの決別を意味する。それは、自由で大きく広がっていくものであるが、同時に道標のない原野への旅立ちである。安定志向と堅実さを徳とする日本的なメンタリティーからすると、我々が最も苦手とすることでもある。しかし、それは、日本が国際社会でのひとかどの地位、たとえば国連安保理常任理事国の地位を望むとすれば、克服していかねばならない重要な一面である。日本が世界に対してこれから示していかなければならないのは、独自の高い国際見識である。
目次
第1部 アメリカのユニラテラリズム―「帝国論」の擬制(アメリカの戦争;イメージとしての「アメリカ帝国」―アメリカの単独行動主義(ユニラテラリズム)の背景
米欧対立―二つの普遍主義の衝突)
第2部 米欧対立とフランス外交(多極構造の世界と多国間協調主義外交―フランス外交の伝統と限界;中東地域をめぐる米仏対立の構図―イラク戦争をめぐる対立の背景;フランスのアンチアメリカニズム)
第3部 「ポスト帝国」時代の国際秩序の模索と日本外交(イラク戦争後の国際秩序の模索と安全保障共同体としての同盟;イラク戦争をめぐる日本外交の課題と教訓―向米一辺倒の同盟外交を超えて)
著者等紹介
渡邊啓貴[ワタナベヒロタカ]
東京外国語大学教授。日本国際政治学会理事。日仏政治学会理事長。日本EC学会理事。フランス外交史・現代フランス政治外交分析を本来の専門とする。十五年ほど前からヨーロッパ統合やヨーロッパ論、更にこの七~八年間は米欧関係論に取り組んでいる。テレビ解説者としても登場し、多岐に活躍の場を広げている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。