内容説明
本書の前半は、現代科学によって明らかになってきた「有機体に固有のメカニズム」を哲学的に捉えなおす試みである。デカルト的な機械論では捉えきれない相互作用または可逆性といった生命の未知の領域を「生命語用論」と称する観点から総合的に考え直すという哲学者からの提案ともいえるだろう。特に人間の認知の問題、つまり人間の“脳‐精神”のメカニズムを解明するためには、生物学者と哲学者がお互いの知見を交換し合うことが重要であり、そうすることによって著者自身もP・S・チャーチランドが目指しているような“神経哲学者”たらんと望んでいる。そのために諸理論間の統合というものが主張されている。他方、後半では、一般的な意味での生命倫理学、つまり生物学の発展が及ぼす倫理的な影響についての考察がなされている。
目次
第1章 生命の倫理学、魂の倫理学、生命倫理学の問題
第2章 発生の弁証法
第3章 発生と認知
第4章 アルツハイマー病と人間精神
第5章 精神病理学と無意味の問題
第6章 生命と精神の境界面
第7章 生命(生物)語用論とエイズの弁証法
第8章 精神病理学から生命倫理学へ
著者等紹介
小幡谷友二[オバタヤユウジ]
平成5年(1993年)早稲田大学・第二文学部・西洋文化専修卒業。平成11年(1999年)リヨン・リュミエールII大学にてDEA取得。平成12年(2000年)中央大学大学院文学研究科・仏文学専攻・博士後期課程満期修了。中央大学非常勤講師を経て、現在、トゥールーズ・ル・ミラーユ大学応用言語学部・日本語学科非常勤講師
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