内容説明
扇は性のシンボル。神霊の依代、呪具としての扇に託された象徴的意味は何か。扇にひそむ思いがけない秘密をときほぐしながら、性と古代信仰の謎に挑んだ異色作。
目次
青島から沖縄へ
踊りと扇
祭りのなかの扇
扇の起源をさぐる
御嶽と蒲葵
神の顕現とは
大嘗祭の蒲葵
ミテグラ
扇と神事の解釈
沖縄石垣の豊年祭
著者等紹介
吉野裕子[ヨシノヒロコ]
1916年東京に生まれる。1934年女子学習院、1954年津田塾大学、各卒。1975‐87年学習院女子短期大学講師。1977年3月『陰陽五行思想からみた日本の祭』によって東京教育大学から文学博士の学位を授与される。2008年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Go Extreme
3
青島から沖縄へ:那智大祭への馬扇 沖縄の古老 首里の鬼の話 斎場御獄 踊りと扇:踊りのけいこ 扇の謎 幸いの意味 踊りと扇 ウェルズ先生 祭りのなかの扇:生活と研究 神事を追って 扇の起源をさぐる:扇の種類 扇の出現 平城京の扇 扇の謎を解く糸口 御嶽と蒲葵:連想好き ラナリ神 人が神になること 神の顕現とは:古代人が考えた人間の誕生・死・神の顕現 大嘗祭の蒲葵:大嘗祭 天皇と百子帳 ミテグラ:クラのいろいろ ミテグラ 扇と神事の解釈:扇の神事と分類 扇をご神体とする神事 沖縄石垣の豊年祭:オンブウリ2021/10/24
hdk
1
浜辺に生い茂る蒲葵(びろう)の葉を模した古代の扇。蒲葵の立ち姿を男根だと直感した筆者が、扇についてもそうした象徴性があるのではと迫っていく姿に興味を惹かれる。伊勢神宮や新潟の祭りで扇が男根に見たてられている。蒲葵自体についても、沖縄の御嶽には、女陰を表す石の囲いと蒲葵が立てられ交接が表され巫女がこもり神が顕現する。また、大嘗祭前の禊の儀式で天皇が籠る建屋は蒲葵で葺かれている。神が現れるのに人の生誕と同じようなプロセスが踏まえられといるのが面白い。古代の人たちの連想力、想像力に感動すら覚えた。2021/10/24
Åkky
0
中沢新一『精霊の王』にて参考文献として挙げられていたため読了。 扇が扱われる、扇の原型と考える神事を取材することで、それまで民俗学で捨て置かれていた扇の意味に迫り、性とも結びつけた画期的な本書。 信仰で重要な見立てとして、地形と扇と巫女の関連は丁寧な図示により分かりやすかった。 個人的な注目点として、「鬼餅」の民話で「下の口」が鬼に怖がられることである。 これに疑問を持つのは女性である筆者には当然なことである一方、その疑問に対し「怖いですよ」と返す先生もまた興味深いと感じた。2024/08/11