内容説明
時間の流れに逆らうように、過去の出来事がわたしたちの社会に憑りつくあり様、このいわば「時間の脱節」に着目し、世界に対しつねに驚きを持ちつづけるという強い意志から研究対象を描きなおす。人類学再想像のための「私的リーディング・ガイド」を付す。
目次
序章 亡霊と痕跡、そして驚き―「憑在論」から見える世界
第1章 終焉を拒む先住民たちの歴史―「返還」と媒介としての人類学的実践
第2章 通過中の民族誌―社会過程として「民族誌を書くこと」
第3章 歴史のなかのミメシス―ディラン/グアテマラ/九・一一以降の世界
第4章 グアテマラ・マヤ系先住民と言語権―征服が痕跡として残る社会における「権利」をどう捉えるか
第5章 文化の所有と流用―亡霊と痕跡が支配する時間からの試論
第6章 録音技術と民俗誌記述―近代のエートスとしての保存文化
第7章 ネオリベラリズムが呼び起こす「人種の亡霊」―グアテマラの未来に残るテロルの痕跡
第8章 ルース・ベネディクトと文化人類学のアイデンティティ―『菊と刀』から『文化のパターン』へと遡行する読解の試み
付録1 人類学をつくり直す―『芸術人類学』について
付録2 文化人類学の魂を探す―私的「リーディング・リスト」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
塩崎ツトム
1
内容は多岐にわたっていて難しい。だけど色々とインスピレーションをもらえた良書だった。2017/06/05
なー
1
卒論を始めるにあたってアカデミックな本も読まなければ、と思い手に取った本。過去の「痕跡」が現在に回帰し、新たな意味を創造する、そこに意味を見出す、というのが本書を通底する考え方だったと思う。なかなか面白かった。前提となる知識の足りなさを痛感したので、まずはそちらに立ち返りたい…。2016/12/15
たぬき
0
『文化の窮状』の訳者。研究のモチベーションは理解できる。2018/05/01