内容説明
〓介石は、対華援助を引き出すべく、筆墨を武器に闘った。ようやく迎えた栄光の勝利の果実は、誰の手に落ちるのか。中米英ソを中心とする連合国の結束が崩れる中、〓介石は孤軍奮闘する。書簡や日記を分析し、忘れられた勝者、〓介石の苦悩を明らかにする。
目次
第6章 ビルマとインドでの蹉跌、一九四二年(チャーチルの慧眼;中国を支えたアメリカの財力 ほか)
第7章 カイロ会談での栄光と挫折、一九四三年(連合国の反撃開始;「日ソ開戦幻想」は続く ほか)
第8章 凋落する中国の地位、一九四四年(ソ連の台頭;「新疆王」盛世才とソ連 ほか)
第9章 新たなる敵はソ連、一九四五年(新疆の「回収」;東トルキスタン共和国の建国 ほか)
著者等紹介
麻田雅文[アサダマサフミ]
1980年東京生まれ。2010年北海道大学大学院文学研究科歴史地域文化学専攻スラブ社会文化論専修博士課程単位取得後退学。博士(学術)。専門は東アジア国際政治史。現在、岩手大学人文社会科学部准教授。第8回樫山純三賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Toska
4
1942年から大戦終結まで。念願の勝利と引き換えに、中国が支払った代償も大きかった。大国相手に援助を乞うて回る蔣介石の外交を見下す者もいるが、国家存亡の時に「頭も下げられないような政治家など無用」という著者の指摘は鋭い。兎にも角にもアメリカを対日戦に引っ張り込んだ彼の粘り腰と打たれ強さは驚嘆に値する。日中戦争というファクターをすっ飛ばして「なぜアメリカとの戦争は避けられなかったのか?」などと議論している現代日本人を見たら、蔣介石としては「お前らいい加減にせえよ」と言いたくなるのではないか。2022/08/28
wuhujiang
3
日米英開戦後の1942年以降から日本降伏まで。大陸打通作戦の敗北によって中国国民政府は連合国から見放されたというような言説があるが、一面正しいものの根底はヨーロッパ優先主義とソ連参戦優先主義によって中国が脇に追いやられていたためと認識した。ソ連とはモンゴルや満洲の鉄道問題で大幅に譲歩を迫られ、主張していた香港は返還されずじまい。日本の降伏によって古い恥は雪げたが新しい恥は雪げなかったという言葉に蒋介石の認識が表れている。あとがきで終戦後については別稿とする、と書かれていたので続きが大いに楽しみ。2022/03/06
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