内容説明
現在は西ウクライナと呼ばれる東ガリツィア。かつてそこでは、ウクライナ人が多数者でありながら、政治的、経済的支配権は少数者のポーランド人が握っていた。ウクライナ人とポーランド人のはざまにあって、彼らに嫌われる原因となる事柄がしばしば生き抜くための唯一の選択肢であったユダヤ人。やがてこの地でウクライナ人の民族独立運動が立ち上がり、スターリンのソ連とヒトラーのドイツが衝突するなかで、ユダヤ人はいかなる運命をたどったのか。
目次
第1部 ポ・リン―ガリツィア・ユダヤ人社会の形成(貴族の天国・ユダヤ人の楽園・農民の地獄;オーストラリア領ガリツィアの誕生;ヨーゼフ改革とガリツィアのユダヤ人;ヨーゼフ没後のガリツィアのユダヤ人)
第2部 両大戦間期東ガリツィアのポーランド人・ユダヤ人・ウクライナ人(一九一八年ルヴフ;ポーランド人とユダヤ人;ウクライナ人とユダヤ人)
第3部 失われた世界―ガリツィア・ユダヤ人社会の消滅(独ソ戦前夜のOUNの戦略;一九四一年ルヴフ;ルヴフのユダヤ人社会の消滅)
著者等紹介
野村真理[ノムラマリ]
1953年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程退学。金沢大学人間社会研究域経済学経営学系教授。一橋大学にて博士(社会学)取得。2003年日本学士院賞受賞。専攻は社会思想史、西洋史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
9
著者が様々な書籍で発表してきた論文をまとめ直したものだが、巧みな編集により優れた通史として仕上がっている。ガリツィアのユダヤ人こそは、歴史的にユダヤ人が味わってきた理不尽な運命の縮図と言うべき存在かもしれない。構造的な歪みを持つポーランド王国で、ユダヤ人に与えられた役割は、必然的に社会の憎悪と嫌悪を集めるものであった。どこにも逃げ場のない「詰んだ」状況の中、なぜシオニズムという発想が出てきたのか分かるような気がする。2024/01/23
とまと
9
十字軍遠征を機に東へ逃走したユダヤ人は、経済的価値に着目され、ポーランドで保護された。ポーランド貴族とウクライナ農民の狭間でユダヤ人は双方に嫌われる。分割によりガリツィアがオーストリアの手に渡ると、差別税を課せられ極貧化し、それは1848革命まで続く。三者の関係は複雑に悪化し、ハプスブルク帝国が崩壊すると、ウクライナ・ポーランド戦争後、ユダヤ人に対するポグロムを誘発する。ウクライナはナチ・ドイツに接近し、独ソ戦の混乱に乗じた略奪はポグロムへと変る。最後にはナチ・ドイツによりルヴフのユダヤ人社会は消滅する。2013/06/30
Homma Takumi
1
「日本人に馴染みのない国を扱っている」という著者の自覚が強く感じられ、それなりに読みやすい。2015/06/24
(ま)
0
ポーランドとウクライナ、ドイツとロシアの狭間。民族が表に出てくるときに救い主の無く始まるポグロム、And then there were none...2021/04/17
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