出版社内容情報
ヨーロッパ周辺から彷徨って来て、この地に定住を許されたユダヤ人共同体の千年にわたる興隆と衰退の歴史を石碑と文献と旅の経験から読み解く
内容説明
黄河南岸の古都開封の旧ユダヤ人街「南教経胡同」から物語は始まる。ヨーロッパの周辺から彷徨って来て、この地に定住を許されたユダヤ人共同体の興隆と衰退の歴史を、石碑と文献の旅の経験から読み解いた、著者渾身の作。
目次
第1章 開封のユダヤ人街を訪ねて
第2章 開封のユダヤ人とイエズス会宣教師の歴史的な出会い
第3章 ゴザニの手紙
第4章 石は語る
第5章 開封のユダヤ人共同体の崩壊
第6章 開封のユダヤ人末裔の現状
第7章 二〇〇六年三月、開封への最後の旅
著者等紹介
小岸昭[コギシアキラ]
1937年北海道生まれ。1963年京都大学文学部独文科修士課程修了。1965年日本ゲーテ賞受賞。1966~68年フランクフルト大学へ留学。2001年京都大学総合人間学部定年退職。現在北海道江別市在住。ドイツ文学専攻。ユダヤ思想研究を軸として、スペイン、ポルトガル、インド、イスラエル、ブラジル、中国などを旅し、ディアスポラ・ユダヤ人の足跡を追究している。1995年「日本・ユダヤ文化研究会」創設(神戸)。2001年「ブレーメン館」創設(札幌)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
17
北宋の都・開封に住むユダヤ人の過去と現在を紹介する。著者はユダヤ思想を専門とし、漢文はおろか、現代中国語もできないと思われるが、本書は欧文文献と日本語訳された漢籍を中心にその歴史を再現しており、中国語を介さずにここまでのことができる(=それだけ外国での開封ユダヤ人への関心が高い)という点に感心した。内容は中国で出ている類書の要点部分のようなもの。本書のオリジナリティとしては20世紀末に開封からイスラエルに渡った家族を訪ね、開封ユダヤ人の「今」を描いている点。2021/02/11
みわ
1
前々から気になってたテーマだったから、大学の図書館で見かけて借りてみた。一息に読み切ってしまうほど面白かった。1000年近くにわたって連綿と受け継がれてきた伝統や文化もたった1.2世代で消えてしまうし、現代はもう意識しなければそういうものを残せなくなってきている。実際、現代の開封ユダヤ人の末裔はもはや「末裔」でしかないし、「開封のユダヤ人」はもう絶滅してしまっている。文化の「保存」はするべきだと思うけど、かつての意味を一度完全に失ってしまった文化の「復興」に果たして意味があるのか、考えさせられた。2023/01/20
土偶
0
もう消えかかっているユダヤ人ディスポアラ集団の研究書。中国にまでたどり着いた痕跡を追う。 この書を手にする前に香港で同じ集団を扱った記事があったので、まだなんとか踏み止まっているのだろうか。2021/08/11