内容説明
近代リベラル国家の原理とされる宗教と政治の分離。しかし、それは本当に可能なのか。著者は、宗教と世俗の根源的で複雑な絡み合いに目を凝らし、「翻訳」概念を導きの糸としてその関係を解きほぐしていく。平等概念の再考、宗教的言説の翻訳可能性と不可能性の意味、国民国家の問い直しなどをめぐって、宗教学のみならず政治学、哲学、人類学など多様な知を横断し、深き射程が示される、碩学の到達点。
目次
第1章 世俗的平等と宗教的言語
第2章 翻訳と感覚ある身体
第3章 仮面・安全・数の言語
著者等紹介
アサド,タラル[アサド,タラル] [Asad,Talal]
1933年サウジアラビア・メディナ生まれ。ニューヨーク市立大学教授(人類学)。オックスフォード大学でPh.D.取得(人類学)
〓田真司[カリタシンジ]
1966年島根県生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中退。東京大学社会科学研究所助手などを経て、國學院大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
8
リベラル国家は政教分離を謳うが、政治と宗教は分離できないと主張する人類学者の著者は、人類学者が調査対象の人々の言語を駆使して聞き取りする際、キリスト教的な真理を動機とする文化の翻訳の使命に、非対称的な力の関係があることに注目する。この「第三世界が持つ様々な意味を単一の方向に押しやっていく産業資本主義社会の力」は、リベラル国家に潜在する宗教的な真理の権力(フーコー)と見なされる。そのような西洋的主体化と翻訳の余地のないクルアーンに向き合う主体化を対照する本書は、生を理解する日々の実践として言語を位置付ける。2024/04/30
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