内容説明
1989年2月14日ヴァレンタイン・デー、世界を駆け巡ったホメイニによる「ファトワ」が、この作家への興味を掻きたてた事実は否めないが、事件が作家の周辺的出来事に後退しつつある今、ようやく彼を、作家として評価し研究する気運が盛りあがりつつある。本書は、ひとつひとつの作品の分析からルシュディの「複合自我」へのこだわりを読みとり、多元主義的セキュラリズムという彼の立場を明らかにするとともに、「危険な冒涜者」ルシュディに冠せられた数々の誤解を解く、本邦初の本格的研究の集大成である。
目次
序章 サルマン・ルシュディの「複合自我」表象
第1章 「複合自我」の象徴としての鳥―『グリマス』について
第2章 「複合自我」の「歴史」的位相―『真夜中の子供たち』について
第3章 「複合自我」の「政治」的位相―『恥辱』について
第4章 「複合自我」の「移民」的位相―『悪魔の詩』について
第5章 「複合自我」の「愛」の位相―一九八九年以降の作品について
結章 「複合自我」表象の文学
補章 ルシュディの「複合自我」的半生と意見
著者等紹介
大熊栄[オオクマサカエ]
1944年埼玉県生まれ。東京教育大学文学部卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。文学博士。国学院大学文学部助教授、明治大学法学部教授を経て、現在筑波大学大学院人文社会科学研究科教授
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