内容説明
反デモクラシーからデモクラシー支持へ。1920年代におけるトーマス・マンの“転向”と、高揚するファシズムへの“抵抗”を、その作品と時代の精緻な分析によって解き明かす。文学、政治、思想から迫る、マン研究の新局面。
目次
第1章 小説『魔の山』―ハンス・カストルプの物語
第2章 “非政治的人間”の政治遍歴―一九二〇年前後のマン
第3章 一九二二年―“転向”をめぐって
第4章 『魔の山』と時代
第5章 昼と夜と―一九二〇年代後半のマン
第6章 魔法を解かれた山―マンとF.G.ユンガー
第7章 “結び”にかえて
著者等紹介
友田和秀[トモダカズヒデ]
1958年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中退。現在、奈良県立医科大学助教授。京都大学博士(文学)。ドイツ文学専攻
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感想・レビュー
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山がち
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第一次世界大戦やトーマス・マンの伝記的側面から作品を探っていくのも面白かったが、やはり時間的観念に関するところが面白かった。「変化と進歩」を生み出す下界に対して、「魔の山」での時間は「無時間的な時間」であり、「自由な時間」を愛するハンス・カストルプはその「魔の山」の時間に親和性を有しているといった指摘なんかは、私の中の『魔の山』におけるハンス・カストルプに関する謎について考察する重要な足がかりとなってくれた。「魔の山」の異常なまでの時間の速さも、逆にその「無時間性」によって生まれてくるということはないか。2014/02/01
ntym
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「魔の山」が面白いだけでなく、当時の政治事情などにも影響されていることが分かりました。2010/01/06