内容説明
日本の敗戦、その後の高度経済成長と音楽需要の高まりのなかで、かつて日本のクラシック界をリードした音楽事務所「新芸術家協会」。ソ連やヨーロッパから一流アーティストを招聘するだけではなく、日本の芸術家も世界に送り出した新芸は、どのようにネットワークを築いていったのか。ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、大阪万博でのボリショイ・オペラなどの公演を手がけ、さらには、冷戦、亡命、KGB、北朝鮮出身のエージェントなど国際関係とも無関係ではなかった驚きの裏話など関係者への丹念なインタビューによって明らかにする。
目次
1章 萌芽―北海道時代
2章 上京
3章 覚醒
4章 雌伏
5章 飛躍
6章 蜜月
7章 日本人の音楽家支援と音楽祭
8章 王者の落日
著者等紹介
野宮珠里[ノミヤジュリ]
1962年青森市生まれ。国立音楽大学附属音楽高校音楽科(声楽専攻)、同大音楽学部声楽学科卒業。教員、画廊勤務などを経て90年毎日新聞社入社。事業本部で自ら企画、プロデュースした奈良・薬師寺の仏教儀礼「最勝会」の舞台上演で03年度文化庁芸術祭賞大賞(音楽部門)を受賞。その後記者として青森支局、京都支局などを経て現在東京本社学芸部(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
36
1960年から80年にかけて、欧米の一流アーティストを続々と招聘した「新芸術家協会」とその経営者・西岡芳和さんの物語。正に、戦後日本の代表的な音楽シーンを辿るエピソード満載で、ワクワクして読んだ。シュワルツコップ、カラヤン、ベーム、ムラヴィンスキー、リヒテルなど、西岡さんのお陰で来日した巨匠たちの素顔が描かれている。「一流なら高額でも売れる」という「新芸イズム」が聴衆から見放され、新芸は倒産したが、「呼び屋」という蔑称に反発し、アーティスト第一を貫いた西岡さんの名を、日本の音楽ファンは心に刻んでおきたい。2020/02/27
E
0
とても面白かった。日本のコンサートビジネス史でもありつつ、文化面の冷戦記でもあると思う。2020/01/29