内容説明
2009年2月、カリブ海に浮かぶフランス領の島、グアドループ、マルティニックで史上最大規模のストライキが起こる。普段は観光客で賑わう南の島々でのこの出来事は、フランス本土に強い衝撃をもたらした。それは単に離島ゆえの物価高の是正を求める運動ではなかったからだ。本書はこの出来事のインパクトから出発し、大西洋をまたぐ奴隷制と植民地主義の血に染まった歴史をたどる。そこに描かれる無数の暴力と、同化/独立を願った民衆・知識人の苦闘は、世界史の新たな扉を開き、読む者を震わせるだろう。数百年におよぶ壮大なスケールと、政治社会から文学、音楽まで広範な領域をほとばしる筆致で描き出す、地域研究を越える圧倒的傑作。
目次
第1章 植民地と海外県、その断絶と連続
第2章 政治の同化、文化の異化
第3章 脱植民地化運動の時代
第4章 「成功した植民地支配」
第5章 見出された希望
終章 カリブ‐世界論
著者等紹介
中村隆之[ナカムラタカユキ]
1975年生。明治学院大学文学部フランス文学科卒業。一橋大学大学院言語社会研究科修士課程および東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。アンティーユ・ギュイヤンヌ大学およびフランス国立社会科学高等研究院での研究滞在を経て、現在、大東文化大学外国語学部専任講師。専攻はフランス語圏カリブ海文学・地域研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
15
2009年、カリブ海のフランス海外県グアドループ島とマルティニック島で物価高の生活に対する史上最大規模のゼネストが発生する。最低賃金の引き上げと生活必需品の物価引き下げを要求しつつ、詩人たちは生きるための最低必需品のみを要請するような現行の社会システムを超克する「高度必需品」の必要性を訴えた。著者はこの運動に、“最初に収奪された場所”としてのカリブ海被支配の歴史構造を、そして支配に抗い言葉を紡ぎ続けた詩人たちの連綿と続く〈痕跡〉を見出し、それらすべてが2009年の現在にまで繋がっていることを明らかにする。2015/02/08
壱萬参仟縁
11
マルティニックの15-24歳の失業率の高さは、47.80%と2人に1人(24頁)。現代もスペインがPIIGSの一員として同率とは知っているが、若者に未来がなくてなんで国家が成り立つのか。改めて奴隷制というのは酷いと思う。アダム・スミスの経済思想も登場する。フランス革命といえども、奴隷解放令をただちに公布しなかったという(78頁)。ネグリチュードは、エメ・セゼールの造語(112頁)。成功した植民地支配とは、自分たちが植民地化されていることにすら気づかない段階(284頁)。昨年の特殊詐欺のような手法を感じた。2014/01/11
takao
1
ふむ2025/02/02
moti moti
0
5年ぶりくらいの再読。フランス領カリブの歴史。基本はカリブ族から2009年のゼネストに至る思想の系譜だけど、セゼール、ファノン、グリッサン、シャモワゾー辺りを中心に沢山の人物が実に魅力的に描かれているので、歴史物語としても面白すぎる。グオ=カ等の音楽についても分量は少ないけど興味深い。2024/03/06
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