内容説明
政府を殺そうとした男、ロルティ。その狂気の犯罪の分析から西欧規範システムの根幹(法、系譜原理など)を明かすとともに、西欧それ自体を徹底的に相対化する。
目次
第1章 殺人から父へ 読者の注意を喚起するために
第2章 ロルティ裁判の核心―何ゆえの理性か 息子の殺人と父の問題についての所見
第3章 1984年5月8日のケベック国民議会襲撃
第4章 ロルティの行為に封じ込められた問題 殺人と系譜原理―自己定礎の私的試み
第5章 父親の役目の荒廃に直面する制度システム ロルティ裁判に関する最終的所見
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アブーカマル
2
ルジャンドルの著作の中では分かりやすい部類らしいがそれでもやはり難しい。正統派ではないかも知れないが、宗教学の著作とも、犯罪心理学の著作とも、ロルティ伍長がケベック政府襲撃、逮捕、自己のイメージビデオ、裁判を通して主体を回復していくサイコドラマとしても読むことができ、面白かった。 ルジャンドルからぼくが学んだことは、もし子供ができても、DNA鑑定はしないということだ笑2017/05/15
tamioar
0
ルジャンドル入門に最適。2017/05/01
あだこ
0
フロイトの「トーテムとタブー」をとことん応用して西洋文明に適用させる。キリスト教圏であるヨーロッパにだけ言えること、という限定を付けているが、フロイトの「トーテムとタブー」の理論は人類の原始において起ったこととされているし、それを前提とするルジャンドルもまた単なる「西洋」を扱っているとは言えないだろう。しかしかれの父性原理やテクスト論などを東洋へと適用するとちょっと苦しい説明にはなりはしないだろうか。なんか物足りないのはそのへんかも。2010/02/17
zk
0
すごすぎ 一生かけてこつこつフランス語やろうかな2019/08/17
白いハエ
0
ルジャンドルの著作にはいくつか触れてきたが、この本によって腑に落ちるところが多い。訳者による丁寧な注釈にかなり理解を助けられた(特に〈父〉を中心とする精神分析用語において)。〈主体〉の同一化のプロセスを通ることによって、〈父〉と殺人の連関を浮かび上がらせる……だけではなく、その理路を、ロルティ伍長の裁判を通じて、法の解釈に新たな道筋を示そうとする態度が印象に残る。「法的に見える地位を殺人と父性原理に与えることである」 哲学は未来の息子を「殺さないこと」において、これ以上になく実践的なものと思う。2019/07/19