感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
5
神秘体験の普遍性を唱える著者は、東西の神秘主義を区別しながらその類似性を前景化する。本書は8世紀インドのヴェーダーンタ哲学者シャンカラの神概念をブラフマンの自己完結性に閉じた静的把握と捉え、13世紀ドイツのエックハルトの上に開いた動的把握と区別する。一方、その静的把握を中世キリスト教に見、動的把握を禅仏教に見る本書は、東西の地理区分を超え、外的要因では把捉不能な神秘主義の聖への態度に接近していく。終盤、著者と同時代人の鈴木大拙への言及では、彼の即非の論理を思わせる動中の静/静中の動のような逆説が頻出する。2021/08/17