内容説明
眼下に広がるアメリカの広大な景観が、池田の理性をすっかり奪っていた。とても落ち着いてなどいられない。「このぶんじゃ、着地するのは日暮れ前だな」困ったことだった。今の高度であれば発見されにくいが、半分ほどまで降りたときには、地上からでも肉眼で見えるようになるだろう。敵戦闘機への対策として、軽機関銃くらいはゴンドラに装備しておくべきだった。が、レーダー波を反射しやすいとの理由で、有人気球は無防備同然での出撃である。案の定、東の空の下方で光るものがあった。陽光に輝く敵影だ。おそらく、気球を発見してでの飛行ではなく、定期的な巡回かと思われる。速度を上げて迫ってくる気配は、今のところない。
著者等紹介
子竜螢[シリュウケイ]
1954年11月25日、富山県高岡市生まれ。会社員や商店経営を経て、1996年『不沈戦艦紀伊』(全16巻学研刊)でデビュー。大胆な展開ながらも細やかな人間模様の描きこみで多くのファンを魅了。第2回の「歴史群像大賞」(学研主催)では、奨励賞を受賞した。現在、「FMラジオたかおか」のパーソナリティーとしても活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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