出版社内容情報
恋に仕事につまづいた主人公が、生き別れた父親との再会を機に、静かな一歩を踏み出した――『むすびや』の著者が贈る感動長編。
内容説明
教師への夢をあきらめ、小さな出版社で契約社員として働く映子。仕事は雑用ばかり、憧れの先輩への恋も叶わない―。自分を持て余す日々を送る映子が、生き別れた父親との再会をきっかけに得たものは…?一等星なのに、日本では限られた条件でしか見えない星「カノープス」をモチーフに、不器用な女性の逡巡と成長を温かく紡ぎ出す珠玉長編。
著者等紹介
穂高明[ホダカアキラ]
1975年宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。2007年『月のうた』で第2回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
287
我が家の事情ですが、奥さんと坊主が歴史班。儂が天文班でね。中々相容れない感じなんです。でもね、本書はその両方を折衷していると言うか、良い所取りしていてね。読むかどうかは分からないけど、勧めてみようかなぁ。複雑で追い切れないって事は無いのですけど、主に中学生頃の回想と現在の境遇、そしてその時々での対人関係が、絡み合いながら進んで行くの。コンプレックスを抱きながら。人との関係性は一筋縄では行かない物ですが、少しずつ解きほぐされて行くのですけど。悪く無い感じなんですけど。ラストが性急な感じがしないでも無く。2024/01/29
おしゃべりメガネ
148
適度な周期で読みたくなる穂高さん作品です。離ればなれで暮らしていた父との突然の再開に戸惑う主人公「映子」。決して大きな出版社とは言えませんが、契約社員として実直に働いています。そんな中、とあるプロジェクトに関わるコトになり、かなり変わり者の「竹口」とコンビを組むコトに。特に大きな出来事は起きませんが、天体ネタをベースにほんわかした雰囲気で、安心して読み進めていけます。ちょっとボリュームが少なく、もうひと押しほしかった感がありますが、コレはコレで良かったのかもしれませんね。ココロが落ち着くステキな作品です。2019/03/25
まさきち
83
幼い頃に両親が離婚し、その後家が火事に見舞われた映子。大学卒業後に教師になるという夢に破れ、小さな出版社で契約社員と働いて鬱々とした日々を重ねていた。そんな中憧れの先輩に再会するも、その恋は実ることはない。仕事では偶然14年間離ればなれだった父に仕事を依頼することになるが、うまく関係を構築することができない。カノープスのように高く上り詰めることのない映子が、最後の数頁で見つけた未来への明るい兆しは是非とも応援してあげたくなりながらの読了です。2020/05/23
どぶねずみ
46
『むすびや』がとても気に入ったので、これも読んでみた。ふんわりと柔らかい空気を書ける作家さんだと思う。カノープスとは南極老人星とも言われ、日本からは滅多に観られない。天文のことはよくわからないけど、この星を見ると長生きするという伝説は信じてみたい。両親の離婚で10年以上会わなかった父娘、ぎこちなく仕事に携わる。私も父とは一緒に暮らせなかったから、このぎこちない気持ちや上手く掴めない距離感がよくわかる。プラネタリウムでカノープスを一緒に観たときに「お父さん、長生きしてください」って言えた瞬間、少し涙が出た。2018/09/06
よっち
32
教師への夢をあきらめ、小さな出版社で契約社員として働く映子。何事もうまくいかないと感じている彼女が、仕事で長らく生き別れていた父と再会し物語。教師を諦めない友人のような粘り強さもなく、仕事にやりがいも見いだせず、憧れる先輩も遠い存在で何もかもが中途半端に感じる映子。そんな彼女が執筆依頼をきっかけに父と再会し「カノープス」という一等星を知ったことで少しずつ物語が動き出してゆく展開で、これまでの彼女の葛藤を思えばあっさりめな結末かなとも感じましたけど、これからの変化を予感させる読後感は悪くないとは思いました。2017/11/05