出版社内容情報
本物か、贋作か――オークションに隠された真実とは。読み継がれるべき叙述ミステリーの傑作、待望の復刊。表題作ほか全6話。
内容説明
死後に注目された荻生仙太郎の絵画が、30年ぶりにオークションへ出品されることになった。そこには幻の傑作も出品されるらしい。荻生の絵に魅せられた美大生の旗野康彦は『顔のない肖像画』という絵を必ず競り落とすよう未亡人から依頼される。その肖像画は幻の傑作なのか、それとも知られざる理由が?(表題作)。究極の逆転ミステリー7編。
著者等紹介
連城三紀彦[レンジョウミキヒコ]
1948年愛知県名古屋市生まれ。78年にデビュー。81年「戻り川心中」で日本推理作家協会賞、84年『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で直木賞、96年『隠れ菊』で柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。2013年に逝去。14年に日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
160
新潮文庫で読んでいるのですが、連城フェチとしてはこの新しい文庫も購入して再読です。もうなんども読んでいるのですが毎度新鮮な印象を受けています。7編の短篇ですがやはり表題作が初期の頃の作品に近いのか好みです。法月さんの解説も非常に力作です。2016/10/03
papako
62
こういう短編集って、つい買っちゃいます。連城三紀彦の女が怖い短編集でした。一話ごとで満足感に差があったというか、めちゃ好き!というのはなかった。短編の割に凝りすぎで、なんだか消化不良気味。好みは『ぼくを見つけて』『顔のない肖像画』は凝りすぎかなぁ。ま、楽しんだんですけどね。こういう短編集、また期待します!他の方でも。2016/12/06
HANA
55
ミステリ短編集。初期の様な抒情は影を潜めるが、ミステリとしての完成度の高さは素晴らしい。冒頭の「藪の中」を思わせるような「穢された目」から、一気に引き込まれ休む間もなく次々と読み進める。思ったのはどの話も立場の逆転が非常に多いという事。ある立場だったのが読み進めていくうちにというのはある意味著者の十八番のような気がするが、本作でもそれが十全に生かされている。特に面白く感じたのは「夜のもうひとつの顔」と「顔のない肖像画」。構図にある程度慣れた所にもう一捻りというのは、騙される快感を存分に味合わせてくれる。2018/04/10
yu
50
Kindleにて読了。 さすが連城さんの作品。どれもこれも面白かった。『穢された目』『ぼくを見つけて』『顔のない肖像画』が特に面白かった。ダントツは『ぼくを見つけて』かな。9年前に誘拐され殺害された少年から「誘拐されたので、助けてほしい」との110番通報が入る。殺害された少年から何故電話がかかってきたのか。ただの悪戯か、それとも。。。 どれもどんでん返しが待っていて、ワクワクしながら読み進めてしまった。2017/07/16
カノコ
43
連城三紀彦の中期作品集。やはり、眩暈がするほど好きだ。ただ静かに、熱く冷たく燃える人間の情念のおそろしさを、どうしてこれほど艶っぽく描けるのだろう。凪いだ心の水面に、美しく白い手が落とす嘘が作る波紋に飲まれて溺れた。しかし、文章の美しさにばかり酩酊していると、どの話も思いがけない境地に連れていかれる。連城お得意の誘拐をテーマにした「ぼくを見つけて」、プロットの技巧が冴える「夜のもうひとつの顔」、女の怖さと強さにゾクゾクする表題作「顔のない肖像画」が特に好き。やはり連城は短編が素晴らしい。2020/02/15