内容説明
奔放な母親とも、実の娘とも生き別れ、昭和から平成へと移りゆく時代に北の大地を彷徨った、塚本千春という女。その数奇な生と性、彼女とかかわった人々の哀歓を、研ぎ澄まされた筆致で浮き彫りにする九つの物語。
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第八二回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収める『氷平線』(文藝春秋)で単行本デビューし注目を集める。12年『ラブレス』(新潮社)で「突然愛を伝えたくなる本」大賞、13年に第一九回島清恋愛文学賞を受賞。さらに同年『ホテルローヤル』(集英社)で第一四九回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
243
それぞれは独立した短篇の集まり。だけど「私はここにいますよ」という感じでポツッと立ち現れる塚本千春という女。通奏低音のように、物語の土台を支えているけれど、ほとんど聞こえない小さな音。星の瞬きのような小さな音はけれどずっと鳴り続けていて、遠く離れた星々たちを繋げ、ひとつの大きな銀河のような物語となる。唐突に現れる塚本千春という存在。けれどそれまでの人生を書かないことで空白が生まれる。その空白を読者に想像させることで、物語全体に何とも形容しがたい深みが生まれる。始まり、さすらい、消え、また生まれるような。2015/04/02
おしゃべりメガネ
197
桜木さん、本当にスゴいです!感動するとか、面白かったとか簡単に感想述べれない領域です。「千春」という一人の女性の‘生きざま’を母親や他の第三者からの目線で歳月をおって描かれているのですが、とにかく哀しすぎです。不幸や不運が常につきまとい、いつも暗い影を背負いながらも生きている主人公のスタイルに完全に引き込まれます。かかわる人々の優しさやストレートな人間性など、どうしてここまで美しい文章にできるのか、感服いたします。特に中盤からラストにかけての‘雰囲気’はまるで映画をみているかのような素晴らしい作品でした。2014/12/28
hiro
164
『ホテルローヤル』に続いて桜木作品2冊目。千春を中心に、母の咲子、娘のやや子の三代を描いた9編の連作短編集。9編の語り手は、咲子、やや子を含む千春に係わる登場人物の9人。このため、この間の千春の人生は、飛び飛びにしか描かれていない。8編目の「案山子」では、その題名に暗示された千春の姿が、辛く悲しい。しかし、最後の9編目「やや子」では希望が少し見え、救われた気がした。全体に暗く重い雰囲気の作品だが、最後まで読者を引き付ける作品の力はさすがで、あらめて桜木さんは直木賞作家だと感じることのできた作品だった。2014/10/18
えむ
157
桜木作品6作目読了。塚本千春に関わる人々を描く短編集。桜木さんお得意のパターンですね。描く主人公は幸薄い女性。その人生は悪い方向へと進みそうなので、先を読むのが怖くなってきます。でも読んでしまいます。人の人生は自分で切り開いてゆくものなんて言うけど、元々の家庭環境も大切なのかなと感じます。表紙は正に作品の中にでてくる『星々たち』でした。2015-202015/04/05
なゆ
130
これは千春という女性の…いや、咲子・千春・やや子の母娘3代の物語だったのかも。それぞれの話で千春はいつも脇役で、つかみどころのない女として書かれている。正直、咲子も千春も好きになれない。母性の欠如という負の連鎖のような話はつらすぎるから。でもゆらゆらと流されるように生きる千春を追いかけるように読んでいくうち、桜木さんならではの鮮やかな展開に。「案山子」そして「やや子」それぞれの話で、この本の装丁がキラキラと意味をもって輝きだし、何度も眺めながら読んだ。せめてやや子は、流れない人生をと願いつつ。2014/08/06
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