内容説明
「すずばあちゃんは、花と話ができんのかあ?」「―ばあちゃんはな、なんとでも、話ができるう。ようぐ見でれば、ずねんと声がきこえでくるもんだあ」
著者等紹介
最上一平[モガミイッペイ]
1957年、山形県生まれ。『銀のうさぎ』で日本児童文学者協会新人賞、『ぬくい山のきつね』(ともに新日本出版社)で日本児童文学者協会賞、新美南吉児童文学賞、『じぶんの木』でひろすけ童話賞、『たぬきの花よめ道中』(ともに岩崎書店)で日本絵本賞受賞
黒井健[クロイケン]
1947年、新潟県生まれ。新潟大学教育学部卒業。1983年に第9回サンリオ美術賞、2006年に第20回赤い鳥さし絵賞を受賞。2003年、山梨県の清里に自作絵本原画を常設する「黒井健絵本ハウス」を設立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
65
室井滋さんがラジオ番組で朗読して紹介していた絵本。最上一平さんが書く文章は、しっとりと丁寧で、戦争の無情と心の傷を花に託して訴えかけてくる。黒井 健さんの絵もとても温かい。また戦争につながる道を歩もうとしているかのような、日本の動きが心配。タイトルは優しく穏やかだが、すずばあちゃんのような苦しみ、悲しみはもう二度とくりかえしてはならない。2023/08/31
はる
47
おばあちゃんの切ない想いが心に沁みるお話でした。一人暮らしのすずばあちゃんは、畑仕事が終わると道端に花の種を植えていきます。かつての哀しい記憶を癒すために……。私の祖母も、ソ連兵に追われて満州から命がけで日本に戻ってきました。すずばあちゃんの想いは他人事ではありません。黒井健さんの絵がとてもいい。2025/05/23
ちえ
43
90過ぎて一人暮らし。村のあちこちに花の種を蒔いているているすずばあちゃん。一番好きな花は野菊。その訳は…褐色で描かれる戦争中の話。すずばあちゃんの願いが伝わるよう。黒井健氏の絵が優しい。2022/06/18
ぶんこ
42
純平君の家の隣には90歳すぎたすずばあちゃんが1人で暮らしています。花の種が手に入ると、道端やちょっとした空き地にまいていきます。村人たちは「すずばあちゃんのおくりもの」と言ってます。黒井健さんの柔らかな絵から、すずばあちゃんの思いが溢れているようです。ほんわかとした素敵なお話と思っていたら、そこには悲惨な戦争での辛くて切ない出来事がありました。つくづく、花が咲き誇れる世界とは、自然と人間が作り上げているのだと痛感。2023/02/03
anne@灯れ松明の火
32
新着棚で。黒井健さんの絵に惹かれて。前半は、花の種をまいている優しいおばあちゃんの話だと思っていたが、後半、話は一転。おばあちゃんの過去が語られ、実は戦争にまつわる話だとわかる。すずばあちゃんのような悲しい思いをする人がもう出ないでほしい。ばあちゃんのおくりものと言われる野菊や月見草の花の美しさが切ない。2022/05/15