感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
101
芥川龍之介が各国で翻訳刊行され、村上春樹に匹敵するほど読まれているという。これほど芥川が広く世界に受け入れられた理由を、その歴史観や社会情勢への反応から現代に通じるものを読み取っていく。『支那游記』や『将軍』に秘めた時局批判を表現上の工夫で検閲当局に気付かせなかったり、自身の失恋経験や体制への謀反思想を『羅生門』に込めたのではと指摘するなど、これまで芥川を読む上で考えもしなかった視点を幾つも提示する。また芥川の友人や同級生の日記を発掘する過程も詳述し、研究を超えて芥川が大好きな著者の個人的側面も楽しめる。2022/04/09
優希
44
芥川が世間に受け入れられていく様子を論じています。歴史観が読者の感じる現代社会なのかもしれません。まさに時代を超えたと言っても良いでしょう。2023/04/02
がらくたどん
35
大正生まれの亡き伯母は芥川の事を「憧れの二枚目文学青年」と言っていた。自分の知っている芥川の紹介写真は例の人間嫌いで神経質そうな顔なので伯母とは趣味が合わんと思っていた。長じていくつかの交遊録から一高・帝大でワイワイと友と文学を語り知的青春を謳歌する姿を知って「案外いい奴」という印象に戸惑ったりした。で、本書。ページを捲ると!おお~紅顔の二枚目文学青年!伯母ちゃん、ごめん。これは憧れますね。書簡や日記の「発見」は文学者像を塗り替え、作品理解の深度を深める。その喜びと興奮が伝わり研究書なのに激押し感が滲む。2022/04/22
アカショウビン
1
芥川の「羅生門」の最後の一文、「下人の行方は、誰も知らない。」を巡り、新情報があった。この作品完成前に、恋人との別れがあり、芥川は新世界を求めていた。また、友人から幸徳秋水の二冊を借りて読んでいた。やはり、新世界を求めていた!下人は悪の世界、暗黒に落ち込み消えて行った、となんとなく思っていた。しかし案外自由に新しい世界を楽しんでいたのかもしれない。2022/09/25
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