著者等紹介
ウォーナー,シルヴィア・タウンゼンド[ウォーナー,シルヴィアタウンゼンド][Warner,Sylvia Townsend]
1893‐1978年。イギリスの小説家、著述家
中和彩子[ナカワアヤコ]
1969年生まれ。法政大学国際文化学部教授。専門はイギリス文学。シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナー協会(Sylvia Townsend Warner Society)会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
14
頭はどこかしら抜け作なのに宣教活動の意欲に燃えるフォーチュン氏。しかし、その地はのんびりとしており、彼ら独自の世界観とで平穏に暮らしていた。当然、宣教活動は上手くいかず、美少年ルエリのみが唯一の改宗者となった。ある日、地震が起きたことで自分の偽善性を知り、自分が信じている(と思っていた)神を失ったと感じた彼は途方に暮れるが、変えようとしていた土地の皆の生活に親しんでいく。まあ、「自分こそ正しい!」からの反省による方向転換は悪くはないです。しかし、フォーチュン氏、ルエリに対する愛の告白が直球すぎです(笑)2013/05/11
きゅー
11
一見してデフォーの『ロビンソン・クルーソー』が思い浮かぶ。フォーチュン氏のやっていることは、ロビンソンが無人島でフライデーを文明化させようと四苦八苦する姿にそっくりだ。それはある意味で合致し、ある意味では誤っていた。ところで著者シルヴィアが同性愛者だったこともあり、本作は老人と少年の恋愛物語という見方でも読める。そうした観点で浮き上がってくる物語を眺めるのも愉しい。尖った驚きはないけれど、いかにもイギリスの小説と思わせるゆったりと流れるような物語。ソファーに横になってリラックスしてページを繰るような一冊。2014/07/11
AR読書記録
3
キリスト教・西欧の、押し付けがましさ・独善性の滑稽さが、読者に笑いを引き起させる要素にはなっているけれども、ここで描かれているのはそういうことではないんだよね。自分を、ちょっと特殊ではあるけれども一種の型に嵌め込んで生きてきたフォーチュン氏が、色々なものを剥ぎ取ったあとの素の自分を見つけていくストーリー。と、私は読んで、たいそう面白かった。背景にこまごまと文学・歴史的エピソードのかけらが貼り込まれているのも楽しい(イザベラ・バード!)。日本ではほとんど紹介されていない(除く荒俣御大)作家というのが残念。2014/07/27
madhatter
2
ストーリーは原著者による序の通り。宣教師が未開の地を訪れ、逆に感化されるという、古典的なノーブル・サヴェジ物語とも取れる。但し本作が面白いのは、ルエリが自分の内面を自身で語るシーンがあまりないところだと思う。つまり、彼の行動は、自身によって説明されるよりも、フォーチュンによって読み解かれ、意味が与えられてゆくことの方が多い。そもそも、彼が何故初めにフォーチュンの元に来たのかさえも曖昧である。フォーチュンの内面の変化とは別に、読者がフォーチュンになって、彼について考えてみても面白いかもしれない。2010/10/22
h
1
めっちゃおもしろい2011/09/06