内容説明
土佐の桜は早く咲き、早く散る。龍馬は、夢、多き春に土佐を旅立った。峠から見下ろした里に、さまざまな想いを残しての旅立ちであった。三月二十四日、春とはいえどすでに城下の桜は散っていた。こんにちの暦に直せば、四月二十二日前後になろうか。早くから覚悟はできていたことであろうが、龍馬も人の子、希望と惜別のはざまで、その胸の内はまるで冬を迎える秋の想いであったのかもしれない。季節が春であったにもかかわらずその想いは複雑で、心という字の上に秋の文字(愁)が、寂しそうにあったのではないだろうか。とにかく、彼らが歩いたであろう多くの旧街道や、生活道が開発という名のもとに消え去ろうとしている。それらをふまえて、著者なりに龍馬たちが歩いたであろう道を今一度、考え直し、「龍馬脱藩(出奔)の物語」としてその記録を束ねておきたかった。これら写真の群れは「新説龍馬脱藩の道」に多くの疑問をもちながら、旧説龍馬脱藩の道を繰り返し追い求め、撮影したもので、文章はその「想い」を思いつくがままに書き下ろしたものである。
目次
廃れゆく土佐の残像
薄れゆく土佐の記憶
主な土佐の街道
十四歳から二十四歳までの龍馬
脱藩前の談合などのこと
脱藩前の前置き(須崎廻り説をとる)
脱藩目的で城下を出る
名古屋坂(名護屋坂)
須崎湾で思う事
葉山・東津野・檮原村へ〔ほか〕
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- 和書
- 松原照子の真世見