内容説明
遣唐使一行の苦難と古代の日中交流におけるロマンを描く歴史文学賞受賞の表題作をはじめ、「惜花夜宴」「すたれ皇子」など五篇を収録する大型新人の異色秀作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やどかり
23
それぞれの作品に少しずつ他の短編にも絡んだ人物や歴史が出てきて、関係性もおもしろい。最後の短編は趣きが変わって、謎解きのようになっているのもおもしろい構成だ。奈良時代の知識が乏しいので理解できるか心配だったけれど、時代の流れや政治に翻弄される人々や、その時々の心情など今と変わらぬ人間の物語として楽しめた。2021/03/10
にゃも
11
奈良時代の空気を感じられる本。どの作品も時代が個々の内面に反映され、相変わらず面白い。なかでも、複雑な政争を登場人物同士の会話という形でわかりやすく示してくれた『夏の果て』が興味深かった。手元に相関図を用意して読めば良かったと思う。また『嘉兵衛のいたずら』には一風変わった楽しさがあった。他とは違って江戸時代が舞台であり、資料を読み解く重要性とそこにはパズルを解くようなように面白さがあることを改めて気付かされた。2021/01/09
Mana
6
表題作の喜娘と、皇室から除籍された聖武天皇の兄弟のすたれ皇子が良かった。彼らのその後は知らなかったけど、無事に生涯を終えられたのなら結果的には除籍程度で済んで良かったと、その後の藤原氏の政争を見ると思ってしまう。2020/12/06
yonemy
3
難しい熟語や固有名詞がたくさん出てくるので、なかなかすんなり頭に入らず苦戦。遣唐使たちの命懸けの航海に、よくまあこんな船で海を渡る気になるものだと、呆れてしまう。知識欲や名誉欲なのか、官僚社会はいつの時代も厳しいと、思い至った一冊。2020/02/08
星落秋風五丈原
2
時の権力をめぐり、それぞれの視点によって全く異なる生き方が生じるのは、現代も全く同じだと感じた。 中でも、「すたれ皇子」が読み応えがあった。2003/01/06