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内容説明
ベーブ・ルースをきりきり舞いさせるなど活躍し、将来を嘱望されるも、三度も出征し落命した悲運の投手・沢村。彼は何を考え、戦地に赴いたのか。本書は人間・沢村を描くとともに、当時の野球関係者の興味深い動きを描き出していく。表向きは時局に迎合し戦争に協力するかのように「偽装」しつつ、職業野球連盟は沢村の悲劇を繰り返さぬよう、野球界や選手らを守ったのだ。その工夫とはいかなるものだったか。知られざる戦時下の野球界を、資料の綿密な分析から再構成する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
93
黎明期のプロ野球と戦争の係りをまとめた本。伝説の名投手沢村栄治、戦前のミスタータイガース景浦将。彼らが召集され、戦死したことは知っていた。野球を継続し、大本営から連盟を守る為、国防費献納大会や軍需工場への慰問試合を開催したり、試合前の手榴弾投げ競技や後楽園球場に設置された高射砲、兵役回避策として選手を大学に入学させたことなど初めて知ることも多かった。巻末には戦死した数多くの選手たちの氏名が記載されている。もし戦争がなかったら、彼等がどのような素晴らしいプレーで観客を魅了したことか、残念でならない。★★★★2018/08/26
s-kozy
68
日本職業野球連盟は昭和11年2月に旗揚げされた。この時代の日本は当然、あの戦争と無縁ではいられない。本書はその戦時下で野球界や選手らを守るためにいかに連盟が奮闘したのかを綿密な資料分析により明らかにしている。「野球に育てられた」と感じている私が知らなければならない内容が描かれていた。良書、読友のサンダーバードさんより回していただいた。本屋で探してもなかなか出会えなかったので、大変、ありがたかった。ち〜さんも読んでおり、それで知った次第。バードさん、ち〜さん、ありがとうございました。2018/11/11
terve
30
戦時下において職業野球連盟がいかなる動きをしたかが書かれています。「カミソリ龍二」と言われた鈴木龍二は、軍部に迎合するだけで無く、進んでいろいろな催しを考え出しました。しかし、それも全ては連盟存続のための偽装でした。連盟を存続させるために東奔西走し、最後まで守り抜きました。また、赤嶺昌志も息子と思わん選手たちを守るために、あらゆる手を使って選手を守りました。石丸進一との別れには涙が出ます。プロ野球黎明期の出来事は非常に重く、娯楽として楽しめるのはなんとありがたいことなのかと感じずにはいられません。2019/10/09
ち~
26
沢村栄治といえば、「昔、大活躍したが、戦争で亡くなった投手」くらいしか知らなかったのですが、3度も出兵していたとは…。戦争で投手としての腕を見込まれ、手榴弾を投げ続けたことにより肩を痛め、軍隊生活により心身ともに兵隊として作り変えられたことにより、野球に復帰後は以前の豪速球は見られなくなり、成績不振で野次を飛ばされ…というエピソードを読むと、沢村賞の重みをズッシリ感じた。副題である職業野球の誕生や、昭和19年の11月まであらゆる策略で野球が続けられた背景に多くのページを使われていた。2018/08/14
浅香山三郎
24
本来は副題が内容を的確に表してゐるのだらう。戦前戦中のプロ野球がその連盟と選手たちを守らうと苦慮する様を描く。当時の雑誌や新聞、著者自身が持つ資料類、野球殿堂博物館のアーカイブス等を駆使した労作で、戦時期の軍による様々な統制(演藝、言論)とも比較検討のできる内容だらう。連盟が軍に先んじて戦争協力策を捻出する様は、「忖度」以外の何ものでもないが、あの頃はさうするしかなかつたのだらうとも思ふ。2017/12/29