感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すたあか
0
李珍宇は小松川事件の犯人で元死刑囚。書簡は3部に分けられ、第一部では彼の信仰の問題に焦点が当てられているが、ここでは彼が「ヴェールを通して」しか感ぜられなかった罪と同様に、状況の特殊性を排した信仰が語られていて、このことの不満が書簡の相手=編者にはあったと思われる。以降の部ではおもに民族の問題に託してかれの現実的な感覚が復興され、最後には編者含む人々との繋がりや愛の感得を通して「ヴェール」の向こうにあった被害者への感情を回復するに至る。この時彼は初めて生に値するもの、そして死に値するもの=人間になったのだ2023/10/13