内容説明
カルヴァンとバルトを愛読する老牧師が自らの死期を意識し、幼い息子に手紙を綴る。南北戦争以来三代にわたる牧師一族の信仰の継承と屈折。帰郷した知己の青年と妻との間で揺れる心。隣人たちの人生―。2005年ピューリツァー賞・全米批評家賞受賞。
著者等紹介
ロビンソン,マリリン[ロビンソン,マリリン] [Robinson,Marilynne]
1943年アイダホ州生まれ。ブラウン大学で学んだ後ワシントン大学で博士号取得(英文学)。これまで4冊の長編を発表、いずれも高い評価を受けた。うち3冊は「ギレアド三部作」と呼ばれる。またイギリスの原発問題を扱ったルポや近代思想に関するエッセイ集などがある。長老派の教会で育ったが、のち会衆派に転じた
宇野元[ウノハジメ]
1959年東京生まれ。日本大学芸術学部美術学科中退。東京基督教短期大学神学科、神戸改革派神学校卒業。日本キリスト改革派芦屋教会牧師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
140
神を全面に出さず、信仰、牧師たちの頑迷さや不寛容、アメリカのピューリタニズムの足枷を、父から息子への手紙の中だけで語る。みな立派な人であっても父と息子におとずれる避けがたい亀裂、愛と尊敬があるがゆえに認められない行動。語られた時は、想像するにキング牧師暗殺前後だろうか。私はクリスチャンではないが、通う聖書教室の神父様は押し付けずに愛を語られる。『ギレアド』で語るのは牧師たちだが、同じ大きな愛を感じた。訳者も牧師。出版も宗教関係。「ジャックの額に手を置いた時、上からバウトンの手が重なるのを感じた」2018/02/02
まふ
104
ピューリッツァ賞受賞作。アメリカのアイオワ州ギレアド(仮空の町)で3代続く長老派プロテスタント教会の3代目の牧師ジョン・エイムズ(76歳)が、心臓疾患により余命幾何もないことを自覚して、4代目となる(であろう)息子に死後開封すべし、として宛てた手紙集。その内容は祖父、父、家族、妻などの家族の絆とその重要性、神の恵みと癒し、信仰の継続と個人的探究、人生の儚さとそれゆえの価値、信仰への想い、その他人生の諸々の事象への気づきなどである。G580/1000。2024/08/02
NAO
66
聖書に出てくる町ギレアドの名を持つ架空の地で、老牧師が死を目前にして幼い息子に手紙を書いている。旱魃、数度の戦争、さまざまな苦難を経て来たが、そんな中で、教会は、何をなしてきたのか。今、死にゆく者の目で、牧師は、自分が苦難の意味を問い続けることをやめてしまったのではないかと自責の念にかられている。ギレアドは、より良い未来をつくろうという思いを失っているようにみえる、と。それでも、彼は、自分が牧師であることに誇りを持ち、最後まで説教を止めまいと考えている。光に溢れているのは、教会だけでなく彼自身でもある。2023/01/13
キムチ
57
「ハウスキーピング」の筆者に感銘を受け、これを読んだものの、からっきし歯が立たない。訳者が牧師というのも珍しい。南北戦争以来3代に渡る牧師一家。カルバンとバルトを愛読する・・と言っても日本人、しかもキリスト教へ帰依していないとあって、無理な読書。バラク・オバマが感銘したからと言って、少しは理解できるかと思ったのは浅はか虚妄。というか私が無知すぎるのだろう。友人の息子ジャックにここまで滔々たる箴言を述べ続けることに畏敬を抱いた。イタリアの牧師と違う「アメリカの」牧師は何かしら。。怖さすらある2020/11/16
ヘラジカ
36
『ハウスキーピング』刊行記念に再読。今年最初の一冊として読んだ一冊もこちらだが、年末に作成するランキングを「その年に刊行された本のみ」と決めていなければ、もしかしたら一冊でベストが決まっていたかもしれない。それほど完成度が高く素晴らしい読書だった。後半、主人公が祝福を施すシーンは何度読んでも美しさが心に迫る。魂の一冊。是非とも『ホーム』と『ライラ』、そして四部作目として構想されている作品も翻訳してほしいと思う。2018/01/11
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