内容説明
動物の権利は関係的権利であり、脆弱性が権利の源泉となる。脆弱性とは有限性と依存性であり、依存性ゆえにすべての生は連帯し、関係的存在となりうる。脆弱性はときに苦しみをもたらすが、その苦しみに対する共感が共同体における合意形成を促し、動物への配慮を権利化する。そして宗教は、動物を含むすべての生に対する脱人間中心主義的な視点を提供し、アガペーとケノーシスに基づく倫理的配慮の可能性をも示唆する。
目次
第1章 動物倫理の思想史(哲学における動物の位置づけ;シンガー、レーガンの動物倫理とそれに対する批判;フェミニズムおよび徳倫理学に基づく動物倫理;キリスト教神学に基づく動物倫理)
第2章 現代の哲学、倫理学における共感という感情(共感概念の思想史;シェーラーの共感概念と宗教哲学;ヌスバウムの同情概念;スロートの共感概念と社会正義;動物倫理に資する共感概念)
第3章 日本における動物倫理の思想的可能性(日本文化における動物の地位;動物供養と動物倫理;西谷啓治の宗教哲学と動物倫理)
第4章 肉食と動物倫理―キリスト教神学からのアプローチ(食に関する神学と動物神学;キリスト教神学における憐れみと美徳;食べることと美徳)
第5章 多様な動物の包摂―新たな動物倫理モデルの検討(動物権利論とケアに基づく動物倫理の課題;権利概念の再考;関係概念の再考;権利・共感・宗教モデルと動物への倫理的配慮の拡張)
著者等紹介
鬼頭葉子[キトウヨウコ]
2000年東京大学文学部卒業、2007京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定、2010年博士(文学)(京都大学)。日本学術振興会特別研究員、イェール大学神学部客員研究員、長野工業高等専門学校一般科准教授などを経て、同志社大学文学部哲学科准教授。専門は宗教哲学、キリスト教学、倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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