出版社内容情報
九条は有効である
聖書釈義から説き起こし、広大な思想史的考察を経て、憲法九条に基づく防衛戦略構想に及ぶ、4論文を収録。
イエスの徹底した平和の福音が政治学的にも現実的妥当性をもつという驚くべきメッセージ。
朝鮮半島の危機や南シナ海の情勢が取り沙汰され、憲法改正の企図が強まる中、キリスト教的立場からいかなる応答が可能かを示す、今こそ必読の書。
【目次より】
1 「右の頬を打たれたら左の頬をも向けよ」
――《山上の説教》と平和構築の倫理
1 論争の中の《山上の説教》
2 《山上の説教》と責任倫理
3 《山上の説教》と現代の平和構築
4 《主の祈り》を生きる
2 兵役拒否のキリスト教精神史
1 イエスと兵役拒否
2 古代教会の兵役拒否
3 中世教会と宗教改革の正戦論
4 平和主義セクトの兵役拒否
5 現代の世界教会と兵役拒否
3 近代日本のキリスト教非戦論
――内村鑑三の思想と系譜
1 義戦論から非戦論へ
2 非戦論の展開
3 非戦論と再臨思想
4 非戦論と兵役拒否
5 非戦論の継承
4 非武装市民抵抗の構想
――日本国憲法九条の防衛戦略
1 非武装による防衛構想
2 市民的抵抗の諸形態
3 市民的抵抗とデモクラシー
4 《草の根》からの市民運動
宮田光雄[ミヤタミツオ]
みやた・みつお氏は、1928年、高知県に生まれる。東大法学部卒業。東北大学名誉教授。長年、学生聖書研究会を主宰して伝道に献身し、自宅内に学寮を建てて信仰に基づく共同生活を指導してきた。主な著書は『西ドイツの精神構造』(学士院賞)、『政治と宗教倫理』『ナチ・ドイツの精神構造』『現代日本の民主主義』(吉野作造賞)、『非武装国民抵抗の思想』『キリスト教と笑い』、『ナチ・ドイツと言語』『聖書の信仰』全7巻、『ホロコースト以後を生きる』『国家と宗教』(以上、岩波書店)、『宮田光雄思想史論集』全8巻(創文社より刊行中)、『十字架とハーケンクロイツ』『権威と服従』『ボンヘッファーとその時代』『《放蕩息子》の精神史』『私の聖書物語』(新教出版社)ほか多数。