内容説明
河童、妖刀、大蛇、バテレンと法華、信玄の首…現代伝奇の旗手が描く誰も知らなかった戦国覇王の顔!その時、本能寺にいたのは誰だ?
著者等紹介
夢枕獏[ユメマクラバク]
1951年、小田原市生まれ。東海大学卒。77年「カエルの死」でデビュー。84年『魔獣狩り』三部作で伝奇小説の金字塔を打ち立てる。89年『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞、98年『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞、2012年『大江戸釣客伝』で吉川英治文学賞を受賞。さらに17年より連続して、菊池寛賞、日本ミステリー文学大賞、紫綬褒章に輝く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
204
夢枕 獏は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者版信長私記、普通の歴史小説家の信長とは、一味も二味も違います。著者創作キャラクターの飛び加藤が大活躍でした。「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」 https://www.shodensha.co.jp/jagae/2021/06/28
keroppi
84
タイトルの「JAGAE」って何なのと思って読み出したら「蛇替え」ということだった。神も仏も信じない合理主義者の織田信長が、池にいるという大蛇を確かめたくて、池の水を抜いて調べたことを「蛇替え」と言った。分からないことは確かめないと気がすまない。宗教者たちに論争させながら、神も仏もないと確信しつつ、自分は神になろうとする。人を殺すことを悪いとも思わない。人生は遊びだと言う。その信長を翻弄するのは、妖術使いか妖怪かという「飛び加藤」。合理的なことと伝奇性や宗教を対比させながら、新たな信長の魅力を描いている。2021/07/27
ポチ
53
信長と妖物の飛び加藤の掛け合いが面白い。最期の本能寺の紅蓮の炎の中で舞う信長がいい。2021/07/03
ぐうぐう
40
夢枕獏の語りに酔う、これは小説だ。まるで講談を聴いているかのように、心地良く物語に呑まれ、語りに酔わされる。それこそ、信長を描く小説は数多あり、描き尽くされたはずなのだが、この『JAGAE』の信長は従来の信長像を踏襲しつつも、その凄みがまったく違う。まさしく夢枕獏の語りが作り出す、それは凄みだ。合理主義者であった信長に対し、妖術を操る飛び加藤こと加藤段蔵を配置する。この相反する存在が、信長の生き様を見事に照射していくのだ。(つづく)2021/08/26
空のかなた
36
伝記ではなく伝奇。夢枕獏さんの力量、世界観が爆発。信長の側に仕え実際にこの時代を見てきたのではないかと思わせる。信長のもつ人を道具として扱う合理性、心の中の虚空と神も仏もいないが自身は神となるのだという矛盾。更に「とびの加藤事、加藤段蔵」と信長との絡みが妙。生涯の相方なのか天敵なのか、とびの加藤の人とは思えぬ妖しさが本能寺で爆発する。また己の貪欲さを見破られぬよう擬態しへつらう秀吉の愛嬌の極み、明智光秀の一歩踏み間違えてしまった頑なな正義感、全てはとびの加藤が仕掛けた巧妙な罠(遊び)が信長に引導を渡す。2021/11/07