内容説明
四人の子持ちで飲んだくれの畳職人、小普請組の武家に嫁いだ大工の娘、幼い頃から見世を支えた口入れ屋の若お内儀…倖せの感じ方は十人十色。懸命に生きる男と女の縁を描く、心に沁み入る珠玉の人情時代小説。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
北海道函館市生まれ。1995年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞を、翌01年に『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。以後、江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
92
宇江佐さんの江戸下町の人情話は面白い。主人公は、56歳・女房運に恵まれなかったのか?バツ3の又兵衛と、バツ1・おいせのベテラン夫婦。とにかく、この夫婦のキャラが飛びぬけています。6尺の大男で貫録はあれど小心者であることは、妻はとうにお見通し。さらに医者ぎらいの始末に負えない頑固者ときています。「風邪ぐらいで医者は呼ぶな!」と言い張ります。妻の献身的な看病でもよくならないのだ…。こんなクソ爺いに一途に尽くす、おいせがいじらしく愛おしくなります。6篇の連作短篇は、笑って、涙して、また読み返したくなります。2021/10/20
Shinji Hyodo
91
日本橋堀留町にある会所に住む又兵衛とおいせ夫婦。会所とは今で言うなら町毎の「集会所」みたいなものだろうか?其処では町役人と呼ばれる立場で町内の様々な厄介事や、火事の時の火消し連中の待機所であったり、それあ忙しなく気の休まらない場所でもあった。材木商を隠居して恋女房と二人のんびり余生を送りたかった又兵衛だが、そうは問屋がおろしちゃくれない。会所に持ち込まれる様々な事件や厄介事をおいせや親友の孫右衛門と共に、時にからりと、時にしっとりと解決して行く様はまさに大岡裁き。今度うちの近所の集会所に寄ってみよう!てな2017/11/01
ぶんこ
60
バツ3の又兵衛さんが怒りっぽいのが苦手で、読んでいて楽しくありませんでした。 むしろ幼馴染で親友の孫右衞門さんの方が良かったです。 穏やかで率直で好感が持てました。 又兵衛さんは、その怒りっぽさから、我慢ならないと思うと、首を突っ込まずにはいられないのではと私には思えました。 その点からいえば短気もいいのかな? う〜ん、やっぱり孫右衞門さんが横にいたからこそ、円満に納まったのではないでしょうか。 私には、ほっこりできる物語ではなかったです。2016/01/21
天の川
46
前作「ほら吹き茂平」ではそぐわない気がした副題がしっくりきた二作目。今作の主人公は一貫して会所を管理する又兵衛・おいせの老夫婦。会所に持ち込まれる夫婦や家族間の問題を、二人と差配の孫右衛門が何とかしようと努力する、宇江佐さんらしい市井ものでした。夫婦共に結婚に失敗した経験があるがゆえの理解と寛容、人生経験を重ねた彼らの提言はじんわりと。謡曲「高砂」で締めくくられたこの一冊、お正月から暖かい気持ちになりました。2014/01/04
Willie the Wildcat
44
相性。夫婦、友人、仕事仲間・・・。巡りあわせも人生。正に「人生の伴侶」。印象的なのは、やはり『高砂』。人別が全てではないが、もれなく心情表現の1つ。”回り道”した分、両者の感慨もひとしおであり、他者の心へも響く・・・。次に『女丈夫』。(他の短編と異なり)奥方様の活躍が痛快!又兵衛・孫右衛門の心境や如何に?!(笑)男女それぞれに最適の出番。無論、そこにも意味・意義!読後、他者を気に掛ける登場人物は、現代の人間関係の裏返しかもしれない・・・。2014/03/17