内容説明
「大坂夏ノ陣目前、徳川方に付く古田織部は、豊臣秀頼の小姓を務める息子への情愛断ちがたく、密かな救出工作を開始した。だが、それは敵方への内通とみなされ、織部切腹の端緒となった」―織部の死の謎に新説を唱えた歴史小説家の鯨岡靖が大阪で撲殺され、続いて織部研究家の茶匠・杉浦宗洸も絞殺された。一方、キリシタン史専攻の大学助教授・片桐謙一郎が東北へ旅立ったまま失踪し、彼の目的地と思われる岩手県大船渡の寺で、「OUROEZ」と台石に刻まれた織部風キリシタン灯籠が発見された…。当初無関係に見えた事件群は、やがて縒り合わさり、そこに意外な埋蔵金伝説が浮上した!乱歩賞受賞作『黄金流砂』をしのぐ新たな趣向と情熱を込めて書下ろした“殺人=暗号=黄金”の傑作歴史推理。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
一笑
8
秀吉が残した埋蔵金をめぐるミステリー。古田織部が大阪城にあった埋蔵金の一部を気仙沼まで移したとある。古田織部と言えば、織部焼の織部、千利休の弟子で茶人である織部が有名だけれど、こんな側面があるとは知らなかった。あまりにも淡々として話が進むため、結構面白い題材なのに高揚感がない。手に汗握る、そんな場面が少しあるといい。2022/05/01
ヨコケイ
1
歴史学者の失踪事件と、歴史小説家の殺人事件。二つの事件を追う二組の男女。その交点は、へうげもの古田織部…という話。中津文彦は、ミステリも歴史物も色々たくさん書いているのだけれど、個人的には、「東北」「黄金」「義経」のイメージが強い。だからうち二つ絡めた本作は、ある意味ドンピシャなネタなはずなのだが、面白く読んだものの、やや薄味な印象。で、気づいたのだが、物足りなさの原因はたぶん、『黄金流砂』にあった「伝奇」的な味わいがなかったからに違いない、というのは、欲張りすぎだろうけど。2016/11/11
チャーリー
1
秀吉の残した黄金が伊達家に渡り山の中に隠されたという話はとても興味深い。現代になって発見されたことになるが、発見されなくても十分物語になったと思う。いまだに埋もれているのではないかと心動かされる(笑)。2014/09/30