実証 写楽は北斎である―西洋美術史の手法が解き明かした真実

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  • サイズ B6判/ページ数 405p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784396611101
  • NDC分類 721.8
  • Cコード C0071

内容説明

写楽と北斎は画風が異なるという固定観念があった。たしかに写楽のそれは役者絵だけであるから、その表情の写実性からは、北斎の美人画のほっそりとした類型性や、北斎漫画的な諧謔的な表情と共通するところがないように見える。が、それは以後、北斎が役者絵というジャンルを扱わなかったからに過ぎない。表現ジャンルが違うのである。だが、写楽が、わずかながら武者絵や相撲絵を描いたことによって、北斎と通底するものが発見できるのである。また写楽の役者絵は、北斎の青年期、春朗を名乗った時代の役者絵の発展形態である、という結論に至らざるをえない。それは形象の類似性と同時に、線の質が共通するからである。写楽の『大谷鬼次』の顔と手と、北斎の『神奈川沖浪裏』の波は、その迫りくる激しい造形感覚では同じなのだ。そのことを読者に説得しようとするのが、この書の目的である。

目次

第1章 写楽はなぜ、世界に迎えられたのか―日本が世界に誇る浮世絵文化の頂点と、その時代
第2章 写楽を探し出す唯一の方法―美術史の作者同定の手法は、東洋も西洋も同じ
第3章 史料は何を語っているか―『浮世絵類考』が招いた研究者の大混乱
第4章 写楽別人説の検討―なぜ、これほどまでに候補者が出てくるのか
第5章 写楽=北斎説の核心―動かしがたい、これだけの証拠の数々
第6章 華麗なる大首絵の世界―第1期=寛政六年五月興行の役者絵
第7章 生動感あふれる全身像の出現―第2期=寛政六年七、八月興行の役者絵
第8章 天才・写楽の新たなる実験―第3期=寛政六年十一月興行の役者絵、相撲絵
第9章 写楽はなぜ、写楽をやめたのか―第4期=寛政七年一月興行の役者絵と、武者絵
第10章 そして写楽から北斎へ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

それいゆ

31
写楽は北斎?そうあってほしいなあという願望があります。ロマンかもしれませんが、夢のある話です。役者絵を描いていた写楽が突然旅に出た。富士山の周りを歩き回って「富岳三十六景」を完成させた。その後どうなったのだろうか?不明!そんな話、以前映画か何かで観たような記憶があります。2020/08/19

GaGa

6
これは凄い。こうして丹念に検証を見せ付けられると本当にそうなのだろうと思わせてしまう。ただ、謎の人物は謎のままのほうがよいというのも一理あるのだが。今回図書館で借りたが、この本カラー写真の挿入も多く、なかなか豪華な作りになっているので、是非とも購入したい。十年前が初版だから、難しいのかもしれないが。2010/05/23

4
「かつてのドイツの美術史家、クルトのように、写楽を世界三大肖像画家の一人に挙げる者もいる」(挙げていません)。これは凄い。ユリウス・クルトの本を読んでもいないのに景気のいいことを並べているのかと思ったら、きちんと読んでいてクルト説を把握した上で(参考文献に題名があるし、他の話題では注釈で出典中の頁数もついている)世界三大肖像画家の一人にクルトが写楽を挙げたとデマ吹聴しているのであります。え、だったら、どうしてクルトの文章を直接引用できなかったの? この人、分かっていてやっていたんだ…。ダメじゃん。星1つ。2019/12/07

つちのこ

2
北斎は役者絵をほとんど描いていない。しかし、春朗、可候と名のっていた頃の作品に何点かの役者絵や美人画があり、その特徴が写楽の絵と一致するのである。それは、顔の表情やパーツ、手足の筋肉の動きや着物、背景まで細部にわたる。足のスネ毛の生え方まで指摘する徹底ぶりである。こうした誰もが納得してしまう事実を何度も何度も「これでもか」と突き付けられると、本を読み終わる頃には、もうすっかり北斎=写楽説の容認者になってしまっている。…というわけで、すっかり著者の術中にはまってしまった私である(笑)。(2000.10記)2000/10/24

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