内容説明
大日本帝国の主権者であった昭和天皇が、天皇であることをどう考えていたのか、どう自己規定していたのかは、まさに昭和史の根幹にかかわる重要なテーマと思われる。この天皇の自己規定について、著者は、東宮御学問所における天皇教育の内容について、詳細、かつ論理明快に分析してゆく。
目次
1章 天皇の自己規定―あくまでも憲法絶対の立憲君主
2章 天皇の教師たち1―倫理担当に杉浦重剛を起用した時代の意図
3章 「三種の神器」の非神話化
4章 天皇の教師たち2―歴史担当・白島博士の「神代史」観とその影響
5章 「捕虜の長」としての天皇
6章 3代目―「守成の明君」の養成―マッカーサー会談に見せた「勇気」は、どこから来たか
7章 「錦旗革命・昭和維新」の欺瞞
8章 天皇への呪詛―2.26事件の首謀者・磯部浅一が、後世に残した重い遺産
9章 盲信の悲劇―北一輝は、なぜ処刑されねばならなかったか
10章「憲政の神様」の不敬罪―東条英機は、なぜ尾崎行雄を起訴したのか
11章 3代目・天皇と、3代目・国民―尾崎行雄が記した国民意識の移り変わりと天皇の立場
12章 立憲君主の“命令”
13章 「人間」・「象徴」としての天皇
14章 天皇の“功罪”―そして「戦争責任」をどう考えるか―終章「平成」への遺訓
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
千本通り
3
これは昭和天皇の「自己規定」の研究である。重要なのは、大日本帝国憲法の「憲法発布勅語」に「朕及び朕カ子孫ハ将来此ノ憲法ノ条章ニ循(したが)ヒ之ヲ行(おこな)フコトヲ愆(アヤマ)ラサルヘシ」と書かれていて、昭和天皇はそれを愚直なまでに守ったということだ。近衛文麿は「日本憲法は天皇親政が建前」と唱えていたようだが、昭和天皇からすれば「どうも近衛は自分にだけ都合の良いことを言ってるね」となる。著者晩年の名著。2022/03/20
きさらぎ
1
中々面白かった。 昭和天皇の戦争責任が主なテーマだが、 論旨は結構シンプルで、読みやすい。 基礎知識がなくてもすらすら(私もそうだ)読める。 昭和天皇は「立憲君主」としての立場を 厳格に守ろうとしてきたのであり、 2.26事件時の対処にせよ、終戦の決断にせよ、 行動の是非はともかく、「立憲君主」としては 道を誤った、という自己認識を持っていたとか。 勉強になりました。2013/03/25
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