出版社内容情報
蛇替え――蛇を捕らえるために、池の水を汲み出すこと。
UMA(未確認動物)の探索者であり、
合理主義者だった信長は神になろうとしていた!
そして、その時、本能寺にいたのは誰だ?
織田信長の生涯には、いくつものあやかしがあった。尾張で覇権を得た信長が夢の中に見た幸若舞『敦盛』は、木下藤吉郎と松井友閑、飛び加藤を結ぶ。さらに桶狭間を制した後には、宣教師と仏僧に宗論を行なわせ、比叡山に火を放った信長。ついに成った安土城で相撲の会を催したとき、ほぼ天下は手中に収めていた。やがて本能寺で、喧噪に目覚めた信長は……。
内容説明
織田信長の生涯には、いくつものあやかしがあった。尾張で覇権を得た信長が夢の中に見た幸若舞『敦盛』は、木下藤吉郎と松井友閑、飛び加藤を結ぶ。さらに桶狭間を制した後には、宣教師と仏僧に宗論を行なわせ、比叡山に火を放った信長。ついに成った安土城で相撲の会を催したとき、ほぼ天下は手中に収めていた。やがて本能寺で、喧噪に目覚めた信長は…。
著者等紹介
夢枕獏[ユメマクラバク]
1951年、小田原生まれ。84年『魔獣狩り』が現代伝奇の金字塔となる。以後、日本SF大賞、柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞、菊池寛賞、日本ミステリー文学大賞、紫綬褒章に輝く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
35
史実かどうか分からないことを描くのが獏先生の得意とするところなのでしょうね。宗教論争の内容やオカルト要素を混ぜていることからも言えると思います。神も仏も信じない信長の精神は強靭ですし。桶狭間を制し、比叡山に火を放ち、ついに安土城へ。合理主義が故に人の心の闇がある。それがここに描かれる信長なのかもしれません。2025/03/15
Tomomi Yazaki
10
物語の要々に現れる飛び加藤。秀吉に語るそれは、歴史を変えるほどの妙案であった。一方、比叡山を焼き払った信長もまた、飛び加藤を呼びつけ、武田信玄の首を持ってこいと命ずる。そんな信長だが、相撲節会をこよなく好んだ。伴天連からもらった黒人、ヤスケ。手足が長く、蹴りや拳で無類の強さを誇った。が、なんとしたことか、小兵のウメに敗れる。そのウメが信長の死を予言する。そして本能寺。その激しい闘いは歌舞伎、いや、能を観劇しているような感覚に陥る。予言された信長の死は悲劇ではなく、定められた運命だったのである。2025/02/17
coldsurgeon
8
織田信長の生涯を特異な視点で描いた物語の後編。飛び加藤こと加藤段蔵という妖使いは、木下藤吉郎・羽柴秀吉や明智光秀とも関わり、人の心に巣くう闇を、育てていくように、立ち回る。合理主義者の信長が、合理主義者ゆえに、周囲からは恐れられ、彼の奇行は、何かの理由があるのだと勘繰られるのだが、そこには人の心の闇があるだけだったのかもしれない。知らなかった資料は、儀式の意味が提示され、とても面白い歴史書にも思えた。2024/10/01
hiroy
5
獏先生が史実かどうだかわからんことを書いてくる。宗教論争の中身とか信長伝で普通は書かないじゃん。ディベート好きそうだけど。飛び加藤出してオカルト混ぜたり。ねっとりとした闇ばかりのあの時代に神も仏も妖怪も信じない信長のメンタルは最強。規格外のカリスマによって極小化される他者との共感力や高い知能からくる合理的で極端に無駄を嫌う言動。そのくせ嘘を見抜く力、洞察力はもはやエスパー。こりゃ下は大変だよな秀吉w 最後に結構前のとこからの伏線回収がちょっとデカ過ぎて割とビビる。そういうことするから一代限りだったんだよw2024/12/20
四不人
4
獏さんが信長を描くと、やっぱこうなるかな。『陰陽師』要素と『九十九乱蔵』の要素が入り乱れてる感じ。でも、近年流行の信長像とは異なるが、やっぱ信長はこうでなくっちゃな。不道徳で、賢く、型破り的で無くては、面白くない。真実の信長も「合理主義者」としての側面が大きいと思う。傑作とは言わないが、記憶に残る信長小説にはなってると思う。2024/09/16