内容説明
信号のある交差点で男が車に轢かれ命を落とした。唯一の目撃者千賀和子は、運転していた会社役員熊谷の信号無視を証言。しかし裁判直前、被告の弁護人結城の許に、匿名の手紙が届く。手紙は和子の偽証を示唆していた。結城は法廷で手紙の内容を突きつける。動揺する和子はやがて真実を語り始める(「赤い証言」)。偽りの証言の裏にある心の闇を鋭く描く、傑作ミステリー集。
著者等紹介
小杉健治[コスギケンジ]
1947年、東京生まれ。83年「原島弁護士の処置」で、オール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。87年『絆』で日本推理作家協会賞を、90年『土俵を走る殺意』で吉川英治文学新人賞を受賞する。以降、社会派推理、時代小説の旗手として活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
157
短編集。読みながら、何となく時代というか古さを感じつつ・・(汗)沢木検事のラスト2編はやっぱり『痒いところに手の届かないもどかしさ』を感じる沢木にニヤリとした。そうか、これは1987年に単行本化されていたのですね。2020/06/28
yukision
51
事件や事故の関係者が偽証する理由をその人の置かれた状況や心情から読み解く短編ミステリ―。昭和に書かれた作品らしく,今の感覚ではやや違和感が残る部分あり。2022/08/18
えみ
40
彼らの証言には何か底意があるに違いない。人が偽りを敢えて証言することの意味。そこに何が見えてくるのか。その激越な口調に隠された猛火烈々たる恨み、誠意の申し出を峻拒した行動に忍ばせた本当の思い。人が人として生き、人と関わっていく限り霧散することのない情動を人は心に抱えている。目的の為に支配したい。真実を歪ませていく情動の背景には何が潜んでいるのか。様々な偽証をする人々の背景と心情に迫る短編ミステリー。どんな理由であれ、裏の顔を裏から見ても表にはならないように、偽りは偽りであり自己満足の手段でしかないと思う。2020/08/27
かおりん
29
1987年刊行された作品の新たな単行本化。時代を感じさせる情や愛憎を静かな筆致で描く。偽りの証言で事件を扇動し、人の心を巧みに操る。愛人や芸者、心中など昭和感満載。沢木検事が事件を担当し、静かに冷静に犯罪の証明を行う。ミステリー短編7篇。2023/07/19
まるぷー
21
殺人事件、自殺幇助、無理心中などに絡みアリバイ工作や証言の嘘、裁判での偽証など人の心の中に潜むやるせない思いを綴る。その嘘を掘り下げ突き詰めていく探偵や弁護士、検察官。自分の悪事を逃れる為ではなく、大切な人を庇うためにつく嘘に何が隠されているのか?真実を曲げることの意味、心の中に潜む闇そのものだと感じた。決してそれらの人たちを憎めない読後感だった。著者シリーズの沢木正夫検事が登場した。2021/04/26
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