内容説明
一九三八年十月―。外務書記生・棚倉慎はポーランドの日本大使館に着任。ナチス・ドイツが周辺国へ侵攻の姿勢を見せ、緊張が高まる中、慎はかつて日本を経由し祖国へ帰ったポーランド孤児たちが作った極東青年会と協力、戦争回避に向け奔走する。だが、戦争は勃発、幼き日のポーランド人との思い出を胸に抱く慎は、とある決意を固め…。著者渾身の大作、待望の文庫化!
著者等紹介
須賀しのぶ[スガシノブ]
1972年埼玉県生まれ。上智大学文学部史学科卒。1994年「惑星童話」でコバルト・ノベル大賞の読者大賞を受賞しデビュー。2010年、『神の棘』が話題に。16年、『革命前夜』で第一八回大藪春彦賞を受賞。16年、『また、桜の国で』で第一五六回直木賞候補作となり、17年、同作で第四回高校生直木賞を受賞した。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
117
須賀作品は、『神の棘』『革命前夜』に続いて3作目。戦乱のヨーロッパものはこの人に任せておけば間違いない。第二次世界大戦時にワルシャワでおこったこと。他国の蹂躙を受け、自由を取り戻すために戦ったポーランドの人々。そして、ただ、人間として死ぬために立ち向かったユダヤの人々。この国のために、自分に何ができるのか。そんな時代を、国を超えた信頼、そして友との友情のために熱くそして強く生きた若者の物語。いつか、また、桜の国で。最後に交わしたその約束が、叶うことを・・・2020/03/15
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100
🌟🌟🌟🌟☆。(🌟×3.8くらい)ポーランドを舞台にした第二次世界大戦の幕開けの話、と言えば良いのだろうか。地図から2度ほど消えた事がある国ポーランド。それがどういう意味なのか。悲惨という言葉では片付かない。最早戦争ではなく一方的な虐殺と言って良い。ドイツとソ連に蹂躙されまくってもそれでも復活する力は一体どこから芽生えてくるのだろうか。最後まで悲しくて胸が詰まる思いで読んだ。恥ずかしながら俺はポーランドの事を全く何も知らなかったが、少しはその片鱗を知れて良かった。吉田大助さんの解説も良かった。2021/08/23
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
96
良書でした。ナチスドイツの足音が目前に迫るポーランド。そこに赴任した若き大使館員棚倉。戦争の回避を、戦争の早期終結を模索し、自ら決意して行動を起こす。もちろんフィクションだからこのような事実があったとは思わない。だがリトアニアにユダヤ人亡命に尽力した杉原千畝がいたように、ポーランドにもこうした日本人がいたとしても不思議ではない。「覚えておくといい。濫用される時は必ず、言葉は正しい使い方をされていない」確かにその通りだと思う。この作品が高校生直木賞に選ばれたと言うのも実に興味深い。★★★★2019/12/26
五右衛門
91
読了。なんやかんやで読む時間がなかなか無くて。けれどもこの作家さんは本当に今そこで起こっているかの様な臨場感がある作風でしかも場所は違えど自国を蹂躙され、地図上からも消されながらも闘い続ける姿を当に日本人が伝える。伝えることを助けた。読み終わってこの感覚が祖国を守る、愛する事だと思いました。改めて再読したいです。2022/10/10
佐島楓
87
私は日本語とせいぜい英語くらいしかわからないが、他の国のほとんどの言語に、愛や友情、理念、理想、信仰といった共通の意味を持つ言葉が存在する理由が理解できた。人間のそうした善の部分を少しでも信じたい。また暗黒の世の中にさせないためにも。2020/01/03