内容説明
一九七九年の山口県岩国市―警察を辞めた椎名高志のもとに、刀根奈津子の自殺の報が届いた。元ヤクザの娘で、父親の服役中に面倒を見ていたこともあり、椎名にとって実の子同然の存在だった。自殺などありえない。真相を探ろうとする椎名の前に現れたのは、顔に刀傷のある若い男。なぜか警察からは邪魔が入り―。陰謀渦巻く先に、男たちが見た哀しい真実とは…?
著者等紹介
樋口明雄[ヒグチアキオ]
1960年、山口県生まれ。2008年に刊行された『約束の地』で、第二十七回日本冒険小説協会大賞、第十二回大藪春彦賞をダブル受賞。2013年『ミッドナイト・ラン!』で第二回エキナカ書店大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いたろう
68
1979年の岩国。ある事情から警察を辞め、倉庫で働いていた椎名高志は、一時期預かって、自分の娘のように育てたことがある刀根奈津子が自殺したと聞き、理由を探り始める。米軍基地の街であり、広島に近く、ヤクザの影がちらつく街、岩国。奈津子は何故自殺したのか。元警官の椎名、元ヤクザで奈津子の実の父親・刀根真太郎、刀根を慕う若者・安藤。非情な世界にありながら、男たちを突き動かすものが、すごく人間的な感情であることに胸が熱くなる。椎名が橋から見下ろす今津川、刀根が釣りをする門前川、暗い川が象徴する世界が深く心に残る。2018/11/12
はつばあば
56
初っ端から「警察もヤクザも似たようなものだ、市民の味方のふりをしているだけ余計にたちが悪い」と言わしめるのは総理のおひざ元山口の民。警官とヤクザと生き方は違っても人として意気投合する事もあるだろう。お陰で悪徳刑事と濡れ衣を着せられ離職せずにはおられなかった椎名の元に実の子同様に育てた娘が自殺したと。米軍基地のある岩国を舞台に大事な人を失い抜け殻になった男が生きている意味をみつけようとあがく姿が川をからめて書かれている。それにしても米軍基地ってこの狭い日本に81ヶ所も必要なんだろうか・・ 2018/09/16
タイ子
48
まず、この表紙の画像が表示されてないのが気になるなぁ。いい表紙なのに…。で、本作に戻ろう。山口県岩国市が舞台。今ややさぐれた元刑事が娘のように思っていた女性が自殺と知って真相を探るため再び生きる意味を見出していくというストーリー。ヤクザが絡んでくるので、血が血を洗う抗争事件もあり、そこに復讐劇が絡んでもはやこれは東映のヤクザ映画ですな。ただ、樋口さんが書いてるのでどこかに優しさが見え隠れするんですね。ヤクザは勝手にドンパチやってればいいけど、カタギはカタギの生きる道を行ってもらわねば。ラストに救われる。2018/09/20
momi
41
舞台は山口県岩国市。元刑事に実の子同然に可愛がっていた娘の自殺の報が届いた!!「まさかあの娘に限って!」出会ってしまった元刑事と元ヤクザが真相をさぐるために命をかけます!! 死に急がないで…でも男気ある彼らの行動に熱いものがこみあげてきました!!元刑事と元ヤクザ…立場をこえ心をかよわせる話でよかった…。だけど哀しいッ!!心に哀しさが残りました…。2018/10/16
マムみかん(*感想は風まかせ*)
37
く~~っ…シビれる!! 荒磯に波がどば~っと来て、東映マークがど~んと出そう(笑)。 足を洗っても、ヤクザはヤクザ。 昔気質の男のけじめのつけ方に惚れ惚れしました。 やはり、元警察官とは覚悟が違いますね。 センチメンタルなラストも好きです☆2018/09/27