内容説明
北関東の資産家である西尾木家の急逝した長男・雄一に隠し子がいた。血の繋がらない弟の敏也はそれを突き止め、秘密裏にその娘の結希を引き取る。友人や彼女と奇妙な共同生活を送りながら慣れない家事や子育てに奮闘する敏也。だがその裏には、結希を使って西尾木家の財産相続に波乱を呼ぶ敏也の企みがあった。家族にとって本当に大事なものは何かを問う、傑作長編。
著者等紹介
大崎梢[オオサキコズエ]
東京都生まれ。元書店員。2006年、書店を舞台に小さな謎を解く『配達あかずきん』でデビュー。身近な謎の面白さと心温まる展開の物語で多くの読者の支持を得ている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
空のかなた
27
著者の初読の小説。途中からエンディングをなんとなく予想できてくるものの、それでも最後まで読ませてくれる力があり、読後感は格別に爽やか。資産家の義父への憎しみを募らせ続けた主人公敏也。義父とは血が繋がっている唯一の息子雄一からの心ない一言、その雄一の隠し子結希。それ以外の登場人物も一人一人が作りこまれているので、脇役でさえ活き活きと動き出していく。長年の積読本、もっと早く読めば良かった。表紙装丁の醸し出すイメージと同様に、素晴らしい傑作。2023/05/05
Mori
18
主人公の思惑がなんなのか引っかかり続けて読み進めたが,それ自体が筆者の思惑だったのではないかと振り返る。2018/09/18
ぶんぶん
15
【図書館】主人公の心がどこあるのか判らず見込み発車、読み進める内に、これは大崎梢の心の中ではと思う。 青年の思惑とは別に周囲の感情が徐々に少女に向けられる。 空色という色は何色だろう、その時々で色を変える空色、思ったまま生きてゆけば良いんだ、そんな思いがつのる大崎文学であった。 家族とは何かを感じさせる一篇である。出版絡みの作品が多かったが、そろそろ人間性に焦点を当てた作品が書きたくなったみたい、またこの路線で読んで見たい。 最近、大崎梢の家族小説に嵌まっている。書店物はもう書かないのかな、それも淋しい。2019/02/17
NAOAMI
13
大金持ちの後継ぎがどうだこうだと騒ぎ立てる大人に直面したことがない僕だが、ホントにこんなに下品なことを言い合うのか。子供の前だろうが、街中でも平気で暴言。一生縁がなくていいと思うが、それほどの資産を持てば解る気持ちなんだろうか。敏也の真面目なのに、他者理解が苦手。憎めない性格と彼を助ける二人の?(笑)女がいい味キャラ。隠された野心がなんか似合わない敏也への違和感。利用しようとした事実が逆転。血縁の呪縛に囚われていたのは誰なのか。後半読んでてもっとアクロバティックな展開も想像したが、結局ぬるいドラマ的オチ。2021/07/09
ちゃも
13
なんで空色なんだろう…と思った。幸せの青い鳥はすぐ近くにいました〜みたいな、探す物語じゃないからだ、きっと。 空は晴れたり曇ったり、朝焼けや夕焼け、暗闇、そして、時に虹もかかる。目に見えているもの、思い込んでいた記憶、先入観〜ひとりでがんばっていたつもりが、気がつけば、たくさんの優しさと思いやりに助けられていた現実…最初の計画がなんであれ、成長と愛情がすべての着地点となる。キレイに晴れわたった空色ではないかもしれない。でも、私には、キラキラ輝く虹が見えた。この家族が、いつまでも幸せでありますように?2018/07/11