出版社内容情報
鳴神響一[ナルカミキョウイチ]
著・文・その他
内容説明
花巻の正教会で、宮沢賢治のロシア語の師ペトロフ司祭が殺された。現場で犯人を目撃しながら誤認逮捕された賢治は、釈放後、恩師から鉱物調査を依頼されて遠野を訪れる。そこで待っていたのは、民俗学者の柳田国男、美しき公爵令嬢エルマらとの貴重な出会いだった。しかしそこへ司祭殺しの大男が再び現われ、エルマを攫い…。エルマの救出に賢治が駈ける痛快冒険活劇!
著者等紹介
鳴神響一[ナルカミキョウイチ]
1962年、東京都生まれ。中央大学法学部政治学科卒業。2014年『私が愛したサムライの娘』で第六回角川春樹小説賞を受賞しデビュー。同作で第三回野村胡堂文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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海猫
56
ミステリーっぽい題ではあるが、読んでみると謀略活劇というべき内容。サブタイトルに名探偵・宮沢賢治とあるけれど、探偵的な活躍はしないし賢治が主役の巻き込まれ型サスペンスと読むべきか。令嬢を奪還したり護送するというメインのお話は王道。時代背景を活かした二転三転する捻りのある展開。後半になるにつれ冒険小説的に盛り上げてくるが、賢治がヒロイックに行動するわけでもなくカタルシスがちょっと弱い。ヒロインと賢治の交流や、エンディングには確かに浪漫が漂う。「謎ニモマケズ」シリーズ化のようで近々第2弾が出るようだ。2018/07/08
はるき
35
知識欲を満たしてくれますが、謎解きは微妙。世界観は好き。2018/06/16
ポップ
29
あえて言おう。これじゃないと。タイトルそのものがトリックじゃないか。謎は未だしも名探偵の活躍は皆無である。宮沢賢治に合わせて、柳田国男と佐々木喜善の登場、遠野が舞台はわかる。だが、本編そのものは、公女と博士を巡る、国際的な諜報機関の隠密行動が主じゃないか。ロシア革命で祖国に帰れないロシア人及びポーランド人と日本人が手を組む護送作戦は予想外だった。語学が堪能なニコライ、道案内するマユちゃんがいなければ、どうなっていたのやら。とはいえ、歴史を脚色した冒険活劇としてみれば概ね納得できるものではあった。2020/09/13
サケ太
18
楽しい大正冒険浪漫譚。探偵役、というより傍観者、視点として宮沢賢治を置いている。当時のロシアを取り巻く世界情勢について知ることも出来る作品。賢治の目の前で殺されたペトロフ司祭。誘拐された少女エルマの正体。史実と繋がる物語。追跡、逃走を繰り返したその先。共産主義の思想が広がり、変わって行く世界の中で、翻弄される人々。蚊帳の外にあった賢治はそんな人々に、人として交流していく。険しい山を越えて、敵と闘う。正しい東北冒険小説。2018/04/30
きょん
15
推理も解決もしてないので、副題の名探偵は偽りありだな。ロシア帝国崩壊に伴う様々な勢力争いのお話は面白かったけど、別に宮沢賢治が主人公じゃなくても良いんじゃないかと思ってしまった。2018/05/01