内容説明
永禄八年、上杉輝虎(謙信)が義を掲げ、下総国臼井城に侵攻を開始した。総勢一万五千といわれる上杉軍に対し、臼井の兵は二千ほど。後ろ盾となる北条家からの援軍は、わずか二百五十余であった。抗戦か降伏か、紛糾する城内をまとめるため、北条の武将松田孫太郎は道端の易者を軍師に仕立てた。白井浄三である。ところが、浄三は想像を絶する奇策を次々と画策し…。
著者等紹介
簑輪諒[ミノワリョウ]
1987年生まれ、栃木県出身。2014年、丹羽家の敗者復活劇を描いた『うつろ屋軍師』で第一九回歴史群像大賞に入賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
354
読みやすさやテンポの良さの代償として、人物の掘り下げの浅さや、起伏のなさも目につく。ただ、コレくらいの読み口の歴史物を欲する時も多々あるので、欠点ではない。この作品が『のぼうの城』にならなかったのは、著者の力量などは関係なしに、題材となった戦自体の問題で、むしろ、この素材をよくここまで調理出来るものだなと肝心してしまうところ。この手の作家さんは、常に資料を紐解いて、ネタになる人物を漁っているのだろうか。孫太郎の武辺や、志津の背景ももう少しピックアップして、厚みがあれば、より好みだった。2018/10/27
しんごろ
190
幻の軍師と言われる白井浄三。実在の人物で謎が多いようです。これまた臼井城の戦いも実際にあった話で上杉謙信の負け戦と言われてるそうな。全くの知識ゼロの中、スーッと物語に入りこみ、あっという間の読了でした。村人、城主、領主の北條側と、それぞれの正義、思惑が絡んで、この物語を通して学んだ気がします。欲を言えば、戦のシーンがもうちょっとあれば良かった気がしますが、浄三と孫太郎のぶつかりあいながらも友情が芽生えたあたりは熱いものを感じました。2019/03/31
岡本
114
上杉謙信が敗れた臼井城の戦いで北条方の軍師と逸話のある白井浄三が主役。史料に乏しい事から、数少ない逸話を繋げて合間を創作するのは大河の真田丸の様。義の男・上杉謙信の狂気や国衆達の心情が丁寧に描かれており読み応えがある。著者の他の小説も読んでみたくなった。2019/04/25
海猫
93
文章が明快で読みやすく、人物像が面白いのでスイスイ読めた。圧倒的な兵数に限られた城兵で立ち向かい、巻き返すという痛快でもあるお話。なのに、なぜに「最低」なのか?終盤で明らかになるこの切り口で苦味が加わった上に、作品世界が拡がりを見せたとも思える。また適宜、回想場面を織り込んで内容を掘り下げる語りが、なかなかに効果的。著者の他の作品を読んでみたくなった。2018/05/27
future4227
71
面白い!和田竜氏の『のぼうの城』みたいな話。押し寄せる上杉輝虎(謙信)1万5千の軍勢に立ち向かう臼井城2千の城兵。そんな戦いあったんかいっとツッコミたくなるようなマニアックな合戦。北条からの助っ人松田孫太郎とインチキ軍師白井入道浄三。こんな軍師初耳だよー。そんな怪しいテキトー感満載の軍師が、次々と奇策を繰り出し上杉軍を翻弄する。次はどんな手が来るかワクワクしながら読んでしまう。史実と虚構がほどよく混ざりあって、エンターテイメント性のある歴史小説に仕上がっている。ぜひ映画化まで漕ぎ着けて欲しい一冊。2018/02/28