出版社内容情報
犬飼 六岐[ウヌカイロッキ]
内容説明
十二歳の信太郎は心が苦しかった。長屋に正吉と父親の弁蔵が越してきた途端、大人達が父子を嫌悪する側と同情する側に分かれたのだ。誰よりものろまに見える弁蔵が、世間体を気にせず我が道を歩くのが大いに気に喰わないらしい。自分の母も二人を毛嫌いするが、信太郎は正吉に興味を抱く。一方、正吉は大人達の仕打ちを意に介さず―真の優しさを問いかける感動作。
著者等紹介
犬飼六岐[イヌカイロッキ]
1964年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業。公務員を経て2000年「筋違い半介」で第六十八回小説現代新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アニータ
1
少し「あれ」な弁蔵とそのお父さんをしっかり支える息子・正吉。住んでいる長屋で毛嫌いされ、理不尽な目にあい、読んでいて辛くなるような話が続きます。この話はそんな正吉を気にかける信太郎の成長物語でもあります。正吉と信太郎のちょっと照れ臭いような友情がほほえましい。そして信太郎の父・栄太郎も人の噂に惑わされず、信太郎の言葉にしっかりと耳に傾けていて好ましい。「鼠や蛇の死骸をおかれる家の子でよかった、そんなものをおいて喜んでいる家の子より、よっぽどいい」「天と地ほどもちがう」という信太郎の言葉が印象に残りました。2021/01/14
山内正
0
子供達の成長した証の物語2017/04/21
オサム
0
「いじめ」を念頭に、作者がこの物語で表現したかったことはよく判る。念を入れて、作中で栄五郎に語らせてもいる。一方で作者は、「いじめ」は生物の社会である以上、決してなくなるものではないことも認識している。それ故、理想論のお花畑思考に走っていない。私はその点に好感を持った。2020/10/16
パトリック
0
登場人物と言えばいい人ばかり、あるいは分かりやすい悪人という江戸市井ものが大量生産?されるなか、父子して長屋の住人から嫌われているという設定は面白い。意味もなく集団で悪意をぶつける心理は現代に通じる怖さがある。弁蔵のキャラはぶっ飛びすぎている感もあるが、それを含めての異色の作品。2019/02/03