内容説明
遂に奥平純明が襲撃され、市兵衛は賊が安宅猪史郎ら元千人同心で、純明のえぞ地政策の盟友だった商人・竹村屋雁右衛門がその協力者と知る。雁右衛門は純明の側室・お露の前夫で、裏切られ、妻を奪われたとして恨み骨髄に徹していた。やがて純明とお露が秘す哀しき真相を知った市兵衛は、己が一分を果たす覚悟を新たにするが…。明日を求めぬ復讐劇に待つ終幕とは?
著者等紹介
辻堂魁[ツジドウカイ]
1948年、高知県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、出版社に勤務。その後退職して本格的に執筆業に入る。迫真の剣戟と江戸情緒溢れる人の絆を描く作風には定評がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤枝梅安
82
侍は誇りを大事にする。町人とて誇りはあれど、隠して商いをする。侍が商いを始めるとき、誇りを隠すことを学ばねばならぬ。安宅と雁右衛門は最後のところで、「誇り」に隔てられてしまったのだろうか。「天下の約束も渡りの約束も同じ約束だ。どちらが大事か、それは戦う者が決める。」市兵衛のこの言葉は安宅の理解を超えたものだったのだろう。安宅も市兵衛も所詮は武士として、嫡男ではない立場として、上からの命に従うことしかできないのだ。封建社会の仕組みを現代人も感じる場面がある。時代小説を読むのはその意味を確かめるためでもある。2017/02/20
紫綺
47
蝦夷の地を起源とする哀しい哀しい物語、厳寒の風と供にここに帰結。2024/03/25
はにこ
42
八王子千人同心達の純明暗殺計画は続く。20年経っても恨みを持ち続けるのもきっとそれが生きる支えになっていたからだろう。お爺ちゃん侍がのんびりしていて良いアクセントになっていたな。大仕事を終えて、皆でまた飲めて良かったね。確かにこんなんばっかじゃ武家仕事は嫌になるわな。2020/09/24
ひさか
29
2013年6月祥伝社文庫刊。シリーズ10作目。上下巻合わせての長編は、重く悲しいお話で、少し疲れました。市兵衛のありようが救いです。2018/06/18
み
25
今回は剣の市兵衛さんでしたが、斬りすぎな感じ(^^;勤めとはいえ…。今作もやりきれない感じでした。そして宿敵は現れず。2015/11/13