内容説明
信長の首を獲る。それは堺の商人だった父を殺された桔梗の悲願。信貴山に篭もり信長への叛旗を企む松永弾正の側女となり仇討ちの機会をうかがっていた。弾正から鷹を使った暗殺法を知らされた桔梗は、韃靼人の鷹匠頭と契り秘術を体得。ついに信長との謁見の場を得るが…(『弾正の鷹』)。デビューの原点ともいえる作品を収録した、直木賞作家の傑作時代小説集。
著者等紹介
山本兼一[ヤマモトケンイチ]
1956年、京都市生まれ。99年「弾正の鷹」で小説NON創刊一五〇号記念短編時代小説賞を受賞。2002年、『白鷹伝』(祥伝社文庫)でデビュー後、04年『火天の城』で第一一回松本清張賞を、09年『利休にたずねよ』で第一四〇回直木賞を受賞する。同志社大学文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
55
山本氏の実質的なデビュー作ともいえる「弾正の鷹」を含む戦国を舞台にした短編集。全編を通して描かれるテーマは「信長暗殺と男女の愛憎」。一見かけ離れていそうなこの二つのテーマを見事につなげている。史実に基づく話あり、完全に山本氏の創作と思われる話あり。愛する女菖蒲を手にするために岐阜城への帰還途中の信長を狙い、狙撃に失敗した銃の名手、杉谷善住坊の末路を描く「二つ玉」。捕えられ、生き埋めにされたまま鋸引きの刑に処されたと伝えられる彼に対してとった菖蒲の行動。嗚呼、こうした形の愛もあるのだ。★★★2014/12/07
文庫フリーク@灯れ松明の火
44
山本兼一さん7冊目はデビュー作品含む短編集。全て異なる主人公だが、テーマは信長暗殺で統一。『雷神の筒』未読のため『火天の城』の源流感じる「安土の草」が印象強い。解説で著者の《信長通じて戦国の歴史を見つめる視点》《信長の周囲の人物の目を通して信長を描く手法》言及されているが、山本兼一さんには、是非とも織田信長という《戦国の異端児・異能の天才》その人自身を描いて欲しい。本気で期待してます。2011/05/14
はつばあば
41
信長を如何にして討ち取らんと図る弾正・孫一その他の親方様と呼ばれる者達。小者に下げ渡された女や仇打ちを図る美女。悲恋?情念?を通して信長が語られる。戦国時代の哀しさを充分堪能した。太平洋戦争でも負けも辛さも味わった。人が自分の意思でなく死を賜るのは、今の世とて不本意だ。情報伝達や機械化は益々進むだろうが・・人の命の軽いこと。2015/11/06
Tadashi Tanohata
25
鉄砲名人あり鷹匠あり、5人の刺客が信長を狙うが、信長の神通力は半端じゃない。やはり本能寺級の大どんでん返し以外は・・との検証か。山本兼一に信長を描かせれば他に比類なし。今頃は時代を越えて一献傾けているのでは、いやお茶かな、黒の天目茶碗で。2020/08/20
Aya
20
悠々と独走する信長と暗殺を目論む刺客達。フィクションでありながら、5編それぞれの手段と過程が面白い。作者の他の作品ともちょっとずつ重なり、信長を中心として描かれる時代を楽しめる。揚羽蝶の陣羽織は信長の勝負服なのかな?刺客も乱破も女の方が逞しかった。2015/07/26
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- 闘う君の唄を 朝日文庫