内容説明
昭和二十三年一月二十六日、豊島区の帝国銀行椎名町支店を訪れた男が、近所に発生した集団赤痢の予防と称し薬を飲ませ、十六人中十二人を毒殺した。敗戦に打ちひしがれる国民を震撼された帝銀事件である。画家平沢貞通が逮捕されるが、平沢の単独犯行説には数多くの矛盾があった。本書はGHQや七三一部隊の関与が噂された事件の真相に迫るドキュメントである。
目次
第1章 犯罪の革命(事件発生;帝銀椎名町支店の位置と情況 ほか)
第2章 平沢逮捕(平沢捜査;居木井警部補の執念 ほか)
第3章 死刑阻止運動と再審(山田弁護士の死;超党派の文化人結集 ほか)
第4章 証拠類(「単独犯」にされた怪;真犯人の人相 ほか)
著者等紹介
森川哲郎[モリカワテツロウ]
1923年生まれ。新聞記者、雑誌記者を経て、作家となる。小説、ノンフィクション、評論、脚本など幅広く活躍。1962年7月、「平沢貞通氏を救う会」を結成。82年12月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シ也
31
昭和二十三年の今日発生した帝銀事件。本書は事件の犯人を追うと言うよりも平沢の冤罪を信じて戦った人たちの話がメインだったように思える。何より驚きだったのが捜査本部の捜査員の多くに平沢が犯人という説を否定する者がいる事。それが居木井警部補率いる名刺班の平沢逮捕により捜査本部の流れが変わったという事から、どこか陰謀の類を感じてしまう。真相はこのまま藪の中なのか...2016/01/26
turutaka
2
平沢が無罪であるとする立場からの一冊。松井の怪しさに言及してるのは良いと思う。私も松井になんらかの関与があると考える。 だが、平沢が完全にこの事件に関係ないかというとそれは限りなく濁ったグレーになる。平沢をうまくハメた黒幕がおり、平沢も一部関わっているのかもしれない。しかし平沢がそれを裁判で言わないのは不自然。 と、思考がぐるぐるしていくのである。これが帝銀事件の闇が持つ磁力なのだろう。2023/01/14
Ikuto Nagura
2
社会を構成する自分たちの問題として、全てを平沢の雪冤に捧げた森川哲郎氏の情熱と義憤が詰まった一冊。現在は、その息子武彦氏が亡くなってしまったことで、平沢の死後再審の道も閉ざされてしまった。「人間一人の生命がかかっている。しかも平沢の生命は、もはや個人の生命ではない。日本の人権運動と民主憲法の生死がかかっているのだ」森川の運動に、自民党や社会党から共産党まで協力し、数多くの知識人や市民たちが賛同した。憲法の理念を実現することが市民の安全と生活の向上に繋がると、皆が信じていた。今もそれは変わらぬはずだけど…。2015/06/03
とりふぃど
0
事件は知っていたのですが、その冤罪性を巡ってここまで壮絶な司法の攻防があったことを本書で初めて知りました。『陪審員もいない官僚だけの裁判の不確かさ』。裁判員制度が始まった現在こそ、知っておくべき事件かもしれない。2009/09/09