内容説明
なぜ、広い世界に目を向けようとしないのか?―米国総領事ハリスの嘆きは、同時に井伊直弼の嘆きでもあった。もはや世界の趨勢を止めることはできない。徒らに攘夷を叫ぶことは、日本国自体を滅亡させることだった…。腹心長野主膳、それに直弼の密偵として、また生涯を賭して愛を捧げたたか女を配し、維新前夜に生きた直弼の波瀾の生涯を描く、不朽の名作。
著者等紹介
舟橋聖一[フナハシセイイチ]
1904年、東京生まれ。明治大学教授、初代横綱審議委員会会長、国語審議会理事などを歴任するとともに、日本文芸家協会を再建し、初代理事長を務めた。競馬、相撲、ダンスと幅広い趣味を持つ作家としても著名である。1976年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
176
ハリス駐在の下田の風景が 当時の庶民の 戸惑いを表わして、興味深い。 開国か 攘夷かに揺れる日本… 大老として 開国へ・そして 安政の大獄・ 桜田門外へ …維新前夜に生きた 井伊直弼と 村山たか 長野主膳が 華麗に描かれている、下巻だった。2018/05/18
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
84
幕末ものを読む流れで安政の大獄が出てくることはよくありますが、井伊直弼の視点でこの事件を扱ったものを読むのは初めて。今、誰かがやらなければ日本にとって取り返しのつかないことになると、自らの死をも覚悟して日本の開国にかけた伊井の胸中を思ってしてもこの弾圧を正当化することは難しいのかもしれませんが、単なる狂人による一方的な蛮行とも思えず別の一面を見たような気がします。維新前夜に生きた直弼の波乱の人生、多くの男を魅了した「たか女」を含めて大河ドラマとしてどう演出していったのか、大変気になるところです♪2018/06/29
真理そら
21
『奸婦にあらず(諸田玲子)』を読んだとき、村山たかについて『花の生涯』でも描かれているのを知った。井伊直弼、長野主膳、多田帯刀等登場人物はほぼ同じだが、帯刀がたかの実子かどうかなどの設定には少し違いがある。日本史では必ず習う暗殺事件の当事者の近くに居て、三日三晩生き晒しにされたというインパクトある女性なのに史料が少ないのはなぜだろう。幕末の混乱の中で誰かが決断を下さなければならない状態で行った井伊の弾圧が正しかったかどうか、暗殺がその後の混乱にどう作用したのかなどあれこれ考えながら読んだ。2018/07/12
hideo
12
安政の大獄から桜田門外の変まで。立場により、見えてくるものが異なり、その見えるものによって個々の決断も異なってくる。歴史は、勝者により、作られるものだが、井伊直弼の決断と、安政の大獄時の諸藩の事情。それから起きる、復讐暗殺の連鎖が描かれ、今回、この本を読み、初めて、長野主膳。村山たか女という人物も知ることができ、時代の見方が少し変わった。若干、時代劇調になるのは、やむ得ないかなぁ。2013/04/10
はな
8
井伊直弼=悪人のイメージは変わった。 名を残した人・名もなき人・・・何かを変えるには沢山の犠牲が出るが・・・ どんなに立派な人であってもやはり死んだらおしまい。直弼の言うとおりだわ。 しかし、最後までたか女の軽い行動が理解出来んかったわ。密偵?ただの噂好きの○軽にしか思えんかった。直弼・・・嫁も含めて女見る目は今一だったか?2023/06/06