内容説明
明治政府は、藩主出身者、いわば「元お殿様」を公使としてイタリア、フランスなどの外国へ派遣していた。彼らは外交のプロではない。現地語は話せないし、なかには洋行の経験がまったくない人もいた。ちゃんと務まったのか?とはいえ、「お殿様→公使」の転身を認められただけあって、夜会、晩餐会、国王との謁見をこなし、社交では夫以上に活躍する公使夫人もいた。また、ある公使は赴任先に妾を同伴するなど、エピソードには事欠かない。日本の“国際デビュー”顛末記。
目次
序章 ツルの一声
1章 鍋島直大―圧倒的な財力で外交の花を演じる
2章 浅野長勲―洋行経験なく、外交官生活も二年で終了
3章 戸田氏共―当代一の美人妻が醜聞に見舞われる
4章 蜂須賀茂韶―妾を同伴で海外赴任を敢行
5章 岡部長職―高い能力で明治の世をみごとに渡る
6章 柳原前光―権力者におもねらず、ライバルに水をあけられる
7章 榎本武揚―朝敵から一転、引く手あまたの「使える男」
著者等紹介
熊田忠雄[クマダタダオ]
1948年、福島県生まれ。早稲田大学卒業後、1970年にニッポン放送入社。報道記者、報道部長、編成局長、取締役を経て、2005年に退社。以後、早い時期に世界各地へ飛び出した日本人の足跡や江戸・明治創業の老舗商店の屋号来歴、現在居住している東京・本郷の地域史などをテーマに執筆、講演活動を行なっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sato
9
廃藩置県により藩主であったお殿様も中央政権で働くことに…。サプライズ人事により外交官となり、海外に赴任することになった元お殿様5名の実話。外交官に選ばれた理由は維新後、または幕府時代に国禁を犯し欧米への留学経験があり語学や海外での生活習慣を少しでも身に着けていたこと、藩時代の莫大な資金があること、そしてヨーロッパでは外交は貴族が行うものとされていたことなどが挙げられている。明治新政府がよく分からないままに外交を始めることになり、様々なエピソードが盛り込まれた「元お殿様の外交官」という切り口は面白かった。2018/04/16
chietaro
5
榎本武揚と黒田清隆の関係が熱いです。榎本武揚の見方が変わりました。あと、生まれもってのお殿様は、歳をとってもお殿様であると感じました。そして、柳原白蓮がこんなところで出てくるとは驚きです。歴史のつながりはいつも予想外です。2020/05/02
ちいくま
2
サプライズ人事!おもしろい内容でした。家計簿とか超高速とかのイメージで、何か藩主=豊かでないと思い込んでた自分がはずかしい… もちろん明治政府のサプライズ人事に適応できなかった人だっていたはずなんだけど、この本の人たち女性含めての適応力にはびっくりだし興味深かったです。2019/11/23
phmchb
1
図書館本。φ(..)『横から見た華族物語』山口愛川、一心社出版部(1932)(p6)/『華族社会の「家」戦略』森岡清見、吉川弘文館(2002)(p60)/「旧大名家の住宅事情」野村悦子;『歴史読本』(2004)(p137)/『和譯蜂須賀家記』岡田鴨里・山田貢村、阿波郷士会(1943)(p142)//小川原正道(p162)2021/10/09
さとる
0
○番外編で登場する榎本武揚。戊辰戦争の賊軍の将が、明治政府で重用され続けた。ホント優秀な人だったんだなあ。また、反対論を押し切って、彼を登用した黒田清隆もステキ。○外交官試験を創設した原敬。その言葉が的確すぎて、また尊敬。「たとい優等の学術あるも採用すること能わざる場合あり。また容貌醜悪にして交際上厭忌(えんき)を来す者、もしくは体格柔弱にしてある地方には在勤せしむること能わずという如き者は採用することを得ざるなり」。2023/01/20